「伝説のシーン再現というサービスカットも交えながらあくまでも格調高い武闘で魅せるシリーズ最終作」イップ・マン 完結 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
伝説のシーン再現というサービスカットも交えながらあくまでも格調高い武闘で魅せるシリーズ最終作
1964年、イップ・マンの営む詠春拳道場に黒人青年が訪れる。彼はイップ・マンの弟子の一人であるブルース・リーがサンフランシスコで開いた道場の門下生で、師匠を空手道大会に招待すべくサンフランシスコ行きの航空券を携えていた。高校を退学させられそうになっていた息子の進学先について悩んでいたイップ・マンは下見も兼ねて渡航するがそこは中国系移民に対する差別が横行している土地。中国人達は中華街で独自のコミュニティである中華総会を組織して対抗しているがブルース・リーはそんな閉鎖的な空気を嫌い自身の道場で中国人以外にも門戸を開き中華総会から疎まれていた。そんな複雑な環境で他所者のイップ・マンは孤立するが、息子の進学先として訪れた高校で虐めを受けていたルオナンを助けたことから面倒な事態に巻き込まれていく。
ロングビーチで開催された空手道大会でブルース・リーが伝説のワンインチパンチを披露する場面の再現という強烈なお宝映像で幕を開ける本作、今までもチョイチョイ登場していたブルース・リーに結構な見せ場が用意されているという大盤振る舞いはあるものの意外なことにシリーズ中で最も地味な作品。『少林サッカー』で顔がブルース・リーに似てるからというだけでチャウ・シンチーに見出されたチャン・クウォック・ワンが20年の時を経て片手指立て伏せや街頭での格闘シーンまでも披露するアクションスターに成長しているという本筋とほぼ何の関係もないところで既に半泣きなんですが、そんなところはあくまでもサービスカット。ドニー・イェン扮するイップ・マンの憂いを湛えた佇まいは水墨画のように凛として美しく、ケレン味が欠片もない格闘の数々はアクション監督ユエン・ウーピンらしい格調高いもので、有終の美を飾るに相応しいものでした。
ちなみに物語の紅一点ルオナンを演じたヴァンダ・マーグラフがものすごくキュートでビックリしました。