「ネガティヴvs.ポジティヴ」空の青さを知る人よ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ネガティヴvs.ポジティヴ
“幽霊”、“妖精”、そして今作は“生き霊”と、オカルトファンタジーをトリガーに秩父の街を舞台にした青春甘酸っぱい系にカテゴライズされる作品である。但し、自分が思うに、今作は前2作と比べてパンチが弱かったような印象を受けるのだがどうだろうか…。タイトル名の前句の有名な諺である井戸=秩父盆地という意味づけは、地質的に納得出来る。前回に比べてコマの動き、キャラの造形がギャグ要素、オーバー要素を入れ込んでいるのは挑戦的である。
ただ、今回のストーリー設定が、アイデアとしてトリッキーだったのにそれを覆すほどのカウンターが無くて、驚くものを得られなかったのが残念であった。ゴダイゴのガンダーラ、サンダーバードのベース、目の中のホクロ等々、キャッチーなギミックは散りばめられてはいるが物語を駆動させるための牽引力にはなれない。そもそもが両親が亡くなり、姉妹二人で健気に生きてきた人生で、お互いを思いやっている構図はそれ程目新しさはなく、スパイスとしてその姉妹が若い時期と年齢を重ねた時期の同じ人物を好きになるというアイデアを起用したのは面白かった。その中で姉のキャラの弱さに展開上、化けることを予想したのだが、それ程のドラマ性は表現せず、「応援しないことを後悔したくない」という着地点に於いて、夢を応援することも又生き甲斐と成り得ることを訴えて、ポジティヴな引き出しを開けようとするテーマ性を表現したかったのだろう。激辛かもしれないが、姉が男に、妹が男に似てるでしょと言葉を投げかけた時、これが作品の深みを増すギミックだと悟ったのだが、どうもこれは自分の勘違い。実は未だ幼い時に、姉と男の犯した過ち故の妊娠出産で育った実子が主人公と思ったのだが、どうもゲスの勘ぐりの様で、只単に性格が似ているというレベルらしい。折角のラストスパートの推進力だったと思ったのだが、考えすぎなんだろうな自分は…
前二作よりもより地域振興映画色が強くなっていて、そこにも少々鼻白む雰囲気を感じてしまっただけに、今作のアッと驚く仕掛けが無かった事への残念感を強く印象付けられた内容であった。