「押井監督ファン、伊藤計劃クラスタ必見の作品」エンテベ空港の7日間 おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
押井監督ファン、伊藤計劃クラスタ必見の作品
ドイツ赤軍派とパレスチナ解放を期すテロリストがフランスの航空機をハイジャックする。目的はイスラエル政府に収監中のテロリストを釈放させること。イスラエル政府は人命と政府の威信を守るために厳しい選択を迫られる。
押井監督ファンの大好物、おっさんたちの会議がいい。特にペレス国防大臣。デーブ・スペクターの底知れなさだけを抽出して増幅したような演技はまさに眼福。
イスラエル政府は軍隊出身者が多いから、制服組との打ち合わせも実務的に見える。特殊作戦専門の部隊長も今後のキャリアと政治を横目に見ながら作戦案を提示する。それに隠微な反発を見せる軍首脳と国防大臣。さまざまな思惑が渦巻く中、果たして政府は作戦実行を決断できるのか。こういう政治のスリルは大好き。
まとまれないのはテロリスト側も同じ。先進国の恵まれた環境にいる若者の抽象的な理想は、パレスチナ側のテロリストをいらつかせる。このシチュエーションは日本の赤軍派を思い起こさせる。チェ・ゲバラの奇跡が多くの若者を誤らせたんだね。
かように人生の選択は本当に難しい。
アバンタイトルでのダンスを演じる女性は、突入部隊に属する兵士の恋人である。劇中では軍人を恋人にすることの苦悩が描かれる。
テロリスト側にも迷いはある。特にドイツ赤軍派のメンバーを演じたロザムンド・バイクの『鳴らない電話』の演技が本当にせつない。
政治サスペンス映画の傑作
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