「ヴェンダースらしい特殊な距離感で描くラブストーリー」世界の涯ての鼓動 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴェンダースらしい特殊な距離感で描くラブストーリー
ヴィム・ヴェンダースといえば、「ベルリン天使の詩」の頃から平面的なだけではなく、天使の視点を用いてカメラを上空にまで移動させながら街や人々の日常を描き出していたのが特徴的だった。また近年は3D技術にこだわりを見せていたのも記憶に新しい。
そんな「空間」にこだわるヴェンダースが紡ぐラブストーリーなだけに、描き方は単純ではない。ここでは恋人同士がただ向かい合って愛し合うという構図を超えて、会いたいのに会えない二人がそれぞれの使命や任務のもとで命を賭ける姿が描かれる。つまり、ここでは平面的な距離に加えて、諜報員役のマカヴォイがテロ組織の中枢へと潜入する状況や、海洋生物学者役のビカンダーが海洋深くへ潜行する状況などが相まって、ヴェンダースらしい空間設計が織り成されていくのだ。
一見すると小さな映画ではあるものの、こんな特殊な物語を映像として成立させるヴェンダースにますます興味がわく一作である。
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