「観客を深い闇に突き落とす凶悪極まりない思春期ジュブナイルスリラー」サマー・オブ・84 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
観客を深い闇に突き落とす凶悪極まりない思春期ジュブナイルスリラー
血塗れなのに爽やかな低予算純愛近未来ディストピアロマンティックアクションの傑作『ターボキッド』を撮った監督トリオ、フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルによる思春期ジュブナイルスリラー。
オレゴン州の田舎町の15歳デイビーは親友のイーツ、ウッディ、ファラデイと隠れ家でエロ本を回し読みしたり深夜に鬼ごっこしたりとバカ丸出しの中学生。そんな彼らの町の近くで13人の子供が行方不明になる事件が発生。大胆にも犯人はマスコミに犯行声明を送りつけ世間を震撼させていた。そんな中デイビーは近所に住む警官マッキーが犯人ではないかと睨みイーツらと監視し始めるが、当然これといった物証が出てくるわけもなく焦ったデイビー達は焦る余りシャレの域を逸脱してしまい・・・。
『ターボキッド』と同じく、どチープなシンセサウンドが全編鳴りっぱなしの80's仕様なのはタイトル通り。『ターボ〜』が『マッドマックス2』リスペクトに満ちていたのに対して、こちらは『E.T.』と『スタンド・バイ・ミー』リスペクトがパンパン。デブとメガネとヤンキーを連れて近所で冒険に繰り出すデイビー君は、ほぼ桃太郎みたいなもの。そんなご近所サスペンスに華を添えるのがボーリング場でDJをやっている隣家の女子ミッキー。窓から双眼鏡で着替えを覗くデイビーを叱りつけるでもなく、フラッと玄関に現れては家に上がり込み冷蔵庫からペプシを取り出してデイビーの部屋でひとしきり両親の愚痴を言ってから窓から去っていく理想的なヒロインです。VHSで鑑賞してるようなテイストでまぁこんな感じよね?っていうストーリーをご丁寧になぞっていくお約束だらけの展開ですが、結末が近づくにつれて少々違和感が。そしてこちらの想定を遥かに越えた深い闇に観客をポーンと突き落としてジ・エンド。凶悪極まりない演出にビックリしました。いい意味でどうかしてる作品です。