「実はなかなか見ごたえある、韓国の新しい喪失の物語。」慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ エクさんの映画レビュー(感想・評価)
実はなかなか見ごたえある、韓国の新しい喪失の物語。
間違いなく喪失の物語ではある。
ただ、ユーモアにくるまれている。
映画館がたびたび笑いに包まれた。
喪失に直面したものが持つ「おかしさ」ゆえなのか。
喪失は魂の渇きでもあるのだと思う。
潤いを失った魂は、ときどき立ち止まってしまう。
無理矢理背中を押すこともできないし、無言でそんな渇いた魂に寄り添うことも簡単なことではない。
お互いを気にかけながらも、脈絡の説明がつかないやり取りになるのだと思う。
ユーモアにくるまれて当然なはずだ。
喪失なんてよくあること。
愛する人との不条理な別れからおのれの出世欲の喪失や、喪失の予感におののくことまで、世の中には、人生には喪失の物語があふれている。
韓国の喪失の物語、実に読後感が豊か。
孤独感を表すかのようなユーモアの数々が面白かった。
そして旅人と茶屋の女性主人のある夜のめぐりあいの時間がとてもやさしくて美しいシーンだった。おバカ中年のような旅人のやせ我慢のようなユーモラスさに救われる思いだった。
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