「深い余韻により、我が人生を見直したくなった」99歳 母と暮らせば 松村清敏さんの映画レビュー(感想・評価)
深い余韻により、我が人生を見直したくなった
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認知症と老老介護がテーマということで、家庭での介護の厳しい現実をイメージしていた。ところが、この映画に登場する超高齢の母親は、妄想、幻覚、下の失敗などの症状が次第に進む一方で、日によっては裁縫を楽しんだり、ハーモニカで昔の流行歌や唱歌を奏でたり、大きな声で歌ったりする。そんな時の満面の笑顔が実に愛くるしい。そして、72歳の息子さんが、床に寝転んだままの母親を抱きかかえてベッドに戻してあげたり、痛がる腰をやさしく揉みほぐしたり、着替えを手伝うなど介護をする時の母親との言葉のやりとりが、漫才のようでとてもおかしくて何度も笑ってしまう。母子が暮らす家の庭先に咲く花々や、餌を求めて訪れる野鳥のさえずりに季節の移ろいと、おだやかな時の流れを感じる。なぜか、ドキュメンタリー映画でありながら、人生の年輪を額に刻む老優の二人が演じる劇映画の名作を楽しんでいるような錯覚と幸福感に満たされる。(投稿者 75歳男。母親は35年前、私が勤務中に入院先で他界)
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