「ストーリーでは無く、バトルシーンを楽しむために行くのは有り?」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー yous0222さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーでは無く、バトルシーンを楽しむために行くのは有り?
バトルシーンは本当にカッコいい。
モンスターの力強さや、それをねじ伏せる主人公達の剣・呪文さばきが良く表現できている。
ただ画竜点睛を欠くとすれば、メラゾーマの火球が小さかったことと、ベギラゴンが炎の呪文のようになっていたこと。それ以外はディテールまでCGの良さをしっかり活用出来ていたように感じる。
ドラクエのプレイ経験がある方なら尚更、プレイ経験のない方でも熱くなれるはず。
楽曲も、原作のⅤ以外からもオーケストラアレンジされて使用されているためシリーズファンには嬉しかった。
所謂"天空シリーズ"以外の楽曲も流れたことには少し違和感を覚えたが…個人的にはマイナスとまでは感じなかった
上記の点はただただ称賛に値するし、これを目的に本作を鑑賞する事は大いに推奨できる。しかし残念ながら許せない点の方が目立ってしまっているのが現状。
・子ども時代〜奴隷時代までがほぼカット
子ども時代は、ドラクエⅤのプレイ画面が紙芝居のように流れ、合間にパパスとの旅情を描写したCGが流れ、それが終わればパパスがゲマに焼かれるシーンまで時が流れる。
そして奴隷時代では、鞭に打たれていたマリアやその兄のヨシュアなどは登場せず、誰の協力も得ず死体に扮してヘンリーと二人で樽に入り脱獄。
無論マリアが登場しない事でヘンリーは独身のまま。
ここまで15分も掛からなかった気がする。
・結婚シーンの盛り上がりのなさ
原作のⅤで中核を担っていると言っても過言ではない"結婚"の存在。ここを一番期待している方も多かったであろう。
原作にあった、ビアンカと協力しつつ婚約に必要なリングを探す…という流れは一切ない。
ブオーンが暴れ、それを倒した者がフローラの婿となるという流れに変わっている。
ビアンカが協力してくれる点は原作どおりだが、前述の"子ども時代が殆どカットされている"為に映画の内容だけでは彼女の"相棒感"は映画内では全く感じられない。
にも関わらず、結婚前夜に"背中を任せられ何でも言い合えるビアンカの方が好き"と気付き酒場でビアンカに言い寄るのみ。
・娘が登場しない
かくして主人公は結婚して子どもを授かる。
原作であれば男女1人ずつの子宝に恵まれるが、本作では息子のみ。
後に石化させられる主人公達を治す"ストロスのつえ"も本来は娘が扱うのだが、本作では息子が扱う…と言うか親に向けて投げて治療する。
これは宛ら"天空の勇者"というよりは"ドルマゲス"の所業だった。
尺の問題で消されたと邪推してしまうが、それにしては余りにも可哀想な降板理由であろう
・オチ
タイトル"Your Story"の意味がわかる瞬間であるラストシーン。
これは悪い意味で文字通り。今まで我々が観せられていた世界はドラクエⅤの世界ではなく"主人公がバーチャル空間でプレイしていたドラクエⅤというゲームの世界であった"と知らされる。つまり今まで共に死線を越えて来た仲間や愛する家族、世界を脅かすモンスターは全て"ゲーム内"の物。
すなわち、この映画は"あなた(主人公)がドラクエⅤというゲームをプレイする物語"という意味になる。
そして、その事実を知らせる為にゲーム世界へ侵入した"現実世界"のラスボスからは"はやく目を覚まして現実に戻れ、ゲームなんてやめろ"と、モチーフにしたドラクエどころか他のファンタジー作品を完全否定するような暴言まで吐かれる始末。これについては擁護できない。
ドラクエⅤに深い愛情を持っている方には勧めづらいところではある。
そして何度もいうがバトルシーンは本当に評価できるので、ストーリーではなくそこを目的に観に行ってほしい。