「悔しさと虚しさで泣けてくる」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー Chamberさんの映画レビュー(感想・評価)
悔しさと虚しさで泣けてくる
本当に悔しくて堪らない。
私は酷評自体は耳にはしていましたがネタバレは避けていました。そして個人的なポリシーというかスタイルとしてどんな映画でもまずは良い所を出来るだけ探してみるようにしています。
観る前はあのドラクエVをどうやって映画一本にまとめたんだろう?とかあのシーンはカットしてほしくないなぁとか考えていたんです。そんな私の心を見事に粉々にしてくれました。
簡単な総評をすれば、くだらない侮辱的なオチで評価をすることも腹立たしいですが、途中までは、作り込まれたグラフィック、キャラクターに命を吹き込んで下さった声優陣の演技、そしてドラクエの魅力である壮大な音楽によって賛否両論の余地はあれど良い作品だったと感じたので脚本を考えた奴以外に、感謝と敬意を表して星1です。
以降詳細な感想(ネタバレ有)
私は問題のオチまでの完成度は充分な作品だと感心していました。ドラクエの魅力である壮大で美しい音楽に、原作デザインを忠実に再現し作り込まれた躍動感溢れるモンスター達に感動しました。
ドラクエVの代名詞といっても過言ではない、ビアンカとフローラのどちらと結婚するのかも、人それぞれの好みはあれど私はよく出来ていると感じました。
青年期後半も娘の存在を無かったことにされた点はさておき、クライマックスに向けての盛り上がりやアクションは上手く尺に収めようとしていると思いましたし、正直なところでは、一体どこがここまで酷評される結果になったのだろう?と感じていました。
個人的な一番の見所はキャラクター達の感情が感じやすくなっているところだと思います。
ここ数年でゲームは飛躍的に進化してきました。美麗な3Dモデルや立ち絵からキャラクターは様々な表情を見せ、昨今では珍しくなくなった声優によるフルボイスなどによって見事に命を吹き込まれています。そういったクオリティの向上によってキャラクターへの感情移入は非常にしやすくなったと思います。
しかし、ドラクエはそんな技術が出来ていない時代に誕生した作品です。言い方は悪いですが、無機質なテキストにドット絵、今のゲームと比べるようなものではありません。それでも、プレイしていた私達は共に戦ってきた頼れる父、パパスが倒れたときは衝撃的で、なんとか助けることは出来ないのかと悩みましたし、結婚の選択肢でもやっぱり幼馴染みのビアンカを選ぶべきかなとか、でもフローラを振るのも心苦しいなとか勇者になったつもりで真剣に悩んでいました。
そんな我々勇者の視点でしか見られなかったキャラクター達が動き、表情や声、仕草からは彼らの感情が見え隠れするのです。あの冒険を共にした仲間達にも魂があるのだと本気で感じました。
勇者に関しても、喋るのはどうなんだとか個人の考えはあれど私は良かったと思います。特に過去に戻り、幼き自分と再会したシーンのラストでパパスの声を聞いた勇者のセリフにはゲームをプレイしていたときの何倍も心を揺さぶられ、思わず目を潤ませてしまいました。
ここまでは本当に賛否両論はあれどドラクエの映画としては良い作品になっていたと思います。ゲマを倒すところまでは本当に良い作品だったんです。
問題はオチなんです。これまでの評価や感動を全て吹っ飛ばします。
ゲマを倒しはしたもののミルドラースが復活する!となり、遂にラスボスかと思っていたら急に勇者以外の世界が止まり、よく分からんヤツが出てきます。ソイツは勇者に対して、この世界はVRゲームの中だと、俺はそのゲームに入っていたウイルスだと告げます。そして、勇者はそのことを思い出すんです。
は?
私はしばらく放心していました。しかし、更に追い討ちが来ます。ウイルスは勇者に向かって、お前が救おうとしている世界や家族、仲間はデータに過ぎないと、そんなものに意味はない、ゲームなんかしてないで大人になれと言います。
は??
そのあと、勇者(プレイヤー)はそんなことは関係ない!ゲームはもう1つの人生なんだ!みたいな感じでなんか出てきたcv.山ちゃんのスライムが私はウイルスワクチンだとか言って、さあコレを使えとロトの剣を渡し、勇者はそれでウイルスを倒してちょっとエンディングやって終わり。
頑張って作ってくださったスタッフの皆さんには申し訳なかったですがスタッフロール中に退場しました。
つまり、長々と賛否両論あれど結構良いじゃないかと思っていたものを全否定されたんです。あの頃プレイしたドラクエのキャラクター達にも魂があり、喜怒哀楽があるんだと感動していたら、でも所詮はゲームの中のデータに過ぎないし、くだらないよ?って言われたようなものです。本当に怒りがここまで沸いてきた映像作品は初めてです。
このオチはドラクエだけでなく、全ての創作物に対する酷い侮辱です。正直、悔しくて仕方ありません。冗談抜きで涙が出ました。私の時間と思い出を返していただきたいです。
全く同じ思いです。
この監督さんは、自身が作った他の映画に「所詮映画だよ?作り事見て現実逃避?大人になれよ」ってシーン入れてもオッケーってことなんでしょうね。
全ての創作を否定し、たくさんの方の心を傷つけた作品だと思います。