「凶悪なファンタジーで描かれる人間の本能」人間の時間 ぐちたさんの映画レビュー(感想・評価)
凶悪なファンタジーで描かれる人間の本能
退役した軍艦がクルーズ船として使われる。海軍士官や水兵がクルーズ船の運航に従事し、乗客は狭い艦内で過ごす。
夜が明けると船は異次元空間にいる。動力は不明だが、海水のない空間を船は浮遊している。
というように、かなり突飛な設定の凶悪なファンタジーである。
うさんくさい国会議員とその息子、新婚旅行に来た若い日本人夫婦。
ヤクザらしいヤクザ、口をきかない不思議な老人、貪欲な売春婦など、わかりやすいキャラクターを持つ者たちが、逃げ場のない艦内で、生き延びるために本能をさらけ出す。
船は、地球の比喩であり、未来へのかすかな希望であるノアの箱舟の比喩であろう。
生き物が何のために生きるのかを考えると、生殖して命をつなぐため、というよくわからないことになる。
そのために必要な本能として食欲と性欲が生き物に備わっているのであれば、食欲と性欲を理由とする人間の悩み、もめごと、争い、犯罪は、いつか人間が滅びるまでなくならないであろう。
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