センターラインのレビュー・感想・評価
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フェールセーフ設計が肝心要
平成は31年で終わっているのに平成39年と言っていたから換算すると令和9年2027年の近未来ですね、架空の年号にしたのはSF感を出したかったのかしら、お遊びですね。
AIやロボットの反乱映画は多いし自動ブレーキなどの軽度な運転補助は実用化、レベル3以上の高度な自動運転も人材不足の折から期待、注目されているからAIと自動運転を絡めたSFはタイムリーなアイデアですね。ただ、AIのトロッコ問題は未解決だし法的整備もこれから、そんな中でAIが被告の裁判なんて無謀な気はします。
自動運転のAI車がセンターラインを越え対向車との衝突事故で乗車していた女性が死亡、新任の交通部配属となった検察官米子天々音は状況、原因を調査し運転AIの尋問、自白から殺人罪で告訴とういうSF法廷ミステリー。
監督・脚本の下向拓生さんは大阪公立大学工学部、大学院で情報工学を学んだエンジニアだからかAIにも詳しい感じはするが、AIが感情を持てると本当に思っているのでしょうかね、アシモフが1942年に唱えたロボット3原則に真っ向から違反だし、自動運転以前に衝突事故防止の自動ブレーキ機能が実用化されているのだから衝突回避は基本中の基本、機械やシステムに故障、劣化やバグは避けられないのだからAIに丸投げでなく冗長したフェールセーフ設計が肝心要でしょう。持ち主にハラスメントを受けたAIが復讐とは科学者としての倫理観以前にプログラミング能力の低さを痛感してしまいます。しかも、罰せられたのは当該機器のみ、同様のシステムの一斉点検、再発防止策を講じるのが社会的責務でしょう。
AI、自動運転、ハラスメントのブームに乗っただけの軽薄な世界観には失望しました。
法廷劇として観ても面白い
AIが人を殺しましたって話なんだけど、有罪を立証しようとする検察官と無罪を勝ち取ろうとする弁護士が火花を散らす法廷劇として、そこだけ観ても面白いのね。被告がAIでなくて、法廷に行くと取り調べと全然違うこと言う人間の容疑者だったとしても、面白い映画だったと思う。
その面白さの上にAI話が来るからね。感情ってなんなんだみたいな話が入ってきて、観ちゃうね。うまいなあと思ったのは、主人公を女の人にしたところだね。幼いAIを『辛かったね。でも、もう大丈夫だよ』って母性で庇うように観えて、観客もAIに感情移入していけんの。
「女性だけに母性があるわけじゃねえだろ」って言われたら、まあその通りなんだけど、この作品の内容なら、男性より女性主人公の方が合ってると思う。
主人公の吉見茉莉奈さんも良いんだよね。舞台の人かな。自然な演技でうまいの。他の人達も、みんな有名じゃないんだけど、役に合ってて自然で良かった。演出がいいのか、キャスティングがいいのか。
僕が観に行った会はアフタートークが柏原寛司さんで「この話は主人公のキャラクターがいい。それで観れちゃう」って言われてて、そうだなあって思った。確かにキャラが立ってるから、それだけで観ちゃうね。
「AI」「自動運転」っていうキャッチーなネタが入ってるから、そこを中心に観られがちなんだけど、それを支える物語がしっかりしてんだよね。脚本・監督の下向拓生さんに力がある。
恐らく多くのひとが思ったんじゃないかという気がすんだけど「《カメラを止めるな!》を大劇場にもってくなら、この作品もってけよ」と僕も思いました。
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