システム・クラッシャーのレビュー・感想・評価
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専門家ならベニーに◯◯症候群の病名を与えるのは容易だろうが、その治療経過を描いている訳ではもちろんない。「更生」させてしまったら単なる感動ポルノだ。
「こちらあみ子」みたいな余韻なのだが、味付けは対極かな。
大人がわかってくれないのは世の常だが、逆に本当にわかってやれるだけの余裕のある親がどれほどいるのか、と考えると何だか暗澹たる気持ちになる。結果、子供は盗んだバイクで走り出すしかなくなるんだろうなあ。
ベニー役ヘレナ・ベンゼルの演技に拍手!
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 傑作だ。ベニーの目からは世界がどのように見えているのだろうとばかり気になった。ラストクレジットの歌はニーナ・ジモン作では?と思ったら当たりでした。
①まるでドキュメンタリーを見せられているような主演の女の子の演技が素晴らしい。
②「周りの人の善意と努力で良くなりました」「誰々とは心が通うようになりました」「社会に適応できるような良い子になりました」とかいったあまっちょろいヒューマンドラマにしなかったのか良かった。
③2019年製作の映画でベルリン(映画祭)で銀熊賞まで獲ったのに、日本では今年まで公開されなかったのは客が入りそうになかったからでしょうね。
確かに主人公の少女は共感を呼ぶようなキャラクターではないし(日本の様に同調圧力の強い社会では逆に言えば反感を招きそう)
④確かにベニーの様な子供が自分の家族ならもちろん自分の生活圏の中にいたとしたら、率直に言って何処かに閉じ込めておきたくなるだろう。
私の弟も統合失調症を患っていて一番酷かった時は突然殴られたり蹴られたり頭から水を掛けられたりしたので、ホント「死んでくれたら良いのに」と思ったし、精神病院に入った時は正直者ホッとした。
だから、母親のベニーに対する恐怖感も私にはよく分かる。
⑤でも本人は好きでやっている訳ではないのはわかっていたし、それはベニーも同じ。
どうしようもないのだ。
10歳の女の子にアンガーコントロールをしろなんて無理だし(大人でも難しいのに)。
しかし、秩序ある社会(システム)にどっては迷惑な存在であるのは間違いない。すぐ暴力を振るうのであれば尚更。
ソーシャルワーカーの人達や医師はみんな善意の人ばかりだし、みんな何とかベニーを社会に適応させようと努力する(言い方は悪いが調教しようとする)。
それは今後秩序ある社会の中で生きていくのなら、本人の為でもあるし社会のためでもある。
でも、調教出来ない動物がいるように、長期出来ない人間がいるかもしれない。
では、そういう人間にはどう対応したら良いのか?
システムにおけるバグのように除去する?
閉鎖病棟や精神病院に閉じ込める?隔離する?(昔なら座敷牢?)
本作も最後は欧州から隔離し南米という遠隔地に閉じ込める方法を選ばざるを得なくなる。
でも、その前にベニーは逃げ出す。走って走って飛び上がる、とベニーを閉じ込めようとする世界にヒビが入る(クラッシュする)…
⑥勿論、現実社会ではこんなことは起こらない。少女は拘束されてでも連れていかれるだろう。
人間は社会的生き物だとよく言われる。
私たちも社会の中で居場所を貰い、社会も私たちにその中で生きていく為の無言のルールを強いてくる。
たった一人で社会(誰か)のお世話にならずに生きていく能力も自信も勇気もないから、私たちは自ずと社会から弾き出されないように、弾き出されないまでも鼻つまみものにならないように、有る時は自分を殺し、自分を抑え、迎合し、生きている。
ベニーのように自分の思うまま、感じるままに振る舞い怒りわめき散らせたら、と思っても勿論、その後の事を考えると恐くて出来ない。
逆に、そういう人たちを見ると社会の秩序を乱すものとして眉をひそめ、酷い場合には排除しても仕方ないと思う。
飼い慣らされて生きていくか、飼い慣らされずに生きていくか…
まあ、そんなに深刻に考えることもないが、
答えは簡単には出ない。と言うか、答えは無いのだろう。
ただ、人間が社会的生き物であるのであれば、その社会に適応・適合するのが難しい或いはできない人間も引っ括めて私たちの生きる「社会」と見なすべきであろう。
この映画はその課題を我々に突き付けてくる。
システムとは何を示すのか?
『魂』はあるものの制御不能。9歳の娘を恐れ怯えた母親は逃亡し、多くの人々が彼女に関わり社会的コストは莫大になるも、対処しようがない。お先真暗な状態で、日本では「月」という作品が生み出され、ドイツではこうなる。どちらにしろ、暗澹たる未来だ。
癇癪持ち。
医療関係者ではないので、はっきりはわからないけど癇癪持ち、ASD、、という事かな。
システムクラッシャーの主人公と周りで頑張るケアラー達の攻防、見ててかなり辛く抱きしめたくなる、そういう映画です。
演技という事を忘れて見入ってしまった。
担当者、施設、受け入れ家庭、ドライバー、ドイツのケアシステムがきちんと分業されていて、1人に負荷をかけない様にして継続的にケアする、手厚くて素晴らしい。(まあ、それでも持て余されてる主人公ではある)日本はどうなってるんだろう?ドライバーがアンガーコントロールしてるシーンで、彼女もいつか自分をコントロール出来る日が来るのだろうか?と思う。
バカ親の行動で無力感に苛まれるケアラー達も抱きしめたい。
主人公がまだ子供だから緩いが、大人になって行くと拘束や罰則がどんどんキツくなるというくだりが彼女の行く末を暗示していて悲しい。
どっぷり疲れた
後追い期、イヤイヤ期、第一次反抗期、中間反抗期、第二反抗期、諸々一気に来てもこんなに大変じゃない
日本の療育も結果が出ない子もいるし、
そういう性質の子だからアフリカに行っても変わらないと思ってしまう
そんな風にしか生きられない人がいる
ヴァルダの冬の旅のような未来しか見えない
柔らかな光の中、母に抱かれて幸せそうな笑みを浮かべるベニーが哀しい
ベニーと母どちらにとっても二度と戻らない美しい瞬間
扱ってる素材がムズいですねー
シンプルな構図と展開、時々差し込まれるイメージショットには混乱させられますがまぁそれが狙いの演出なんだと理解できましたし、分かりやすいストーリーだったので、自分はぐっと来ました。
とはいえ、扱っている事柄はかなり難しいと感じたので、面白いとか楽しいといった感情にはとてもなれません。むしろ深いに感じるところが多々あるし、嫌悪感を持つ人も多いかと─。
内容がムズいだけに、敢えてシンプルかつ分かりやすく作成されているような印象で、特に音楽なんかにそういった要素はふんだんに感じたので、捉えようによっては酷い内容なのかも─。最後のニーナ・シモンは最高なんですけどね。
個人的には演者の頑張りなんかも汲み取って、いいね!ってな感じです。
フラッシュバック
幼児期に父親から受けた暴力のトラウマを持つ9歳のブチ切れオネショガールの話
直ぐにキレて暴れ捲り危害を加える為に、母親や弟妹と離れ施設に預けられているものの、そこでも暴れて追い出され施設を転々とするベニーに、通学付添人のミヒャが寄り添うことになるストーリー。
トラウマは別としても切れまくりワガママ放題のベニーだけど、何が彼女をそこまでさせるのか…と思っていたら、母親がクソ過ぎてモヤモヤモヤモヤ。
そして行き場を無くして行くベニーが哀し過ぎる…と思っていたら、やっぱり母親が…F××K!!!
色々考えさせられるしなかなか良かったんだけれど、映画としてオチが無くてかなり残念だった。
システム・クラッシャー 所々ドキュメンタリー作品を見てる様な感覚に...
システム・クラッシャー
所々ドキュメンタリー作品を見てる様な感覚に陥る。主人公のベニー役の子の演技がとてつもなく凄い。自然と惹き込まれる。
とにかくベニーに幸せになってほしい、ベニーの望み通りになって欲しいと願って観ているもどうしてもうまく行かない。決して救われる可能性がゼロなわけではない。
時折見せる優しさ、幸せそうな笑顔が彼女を救おうと気持ちを奮い立たせてくれるもどうしてもうまくいかないことに繰り返し。
最後のミヒャ同様こちらも心が折れかけるも、周りの大人が絶対に心折れてはいけない事だけは終始作品から伝わる。
明確な解決法はこの作品では描かれていなかったがこれが現実なのだろう。
登場人物達と同様不安や恐怖、葛藤などを味わう事のできる作品であった。
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28 コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話- 3.2
29 コヴェナント/約束の救出 3.0
30 僕らの世界が交わるまで3.0
31 ゴジラ×コング 新たなる帝国 3.0
32 ブルックリンでオペラを 3.0
33 ストリートダンサー 3.0
34 カラーパープル 2.9
35 弟は僕のヒーロー 2.8
36 RED SHOES レッド・シューズ 2.8
37 画家ボナール ピエールとマルト(横浜フランス映画祭2024) 2.7
38 Vermines(横浜フランス映画祭2024) 2.6
39 関心領域 2.6
40 ジャンプ、ダーリン 2.5
41 エクスペンダブルズ ニューブラッド 2.3
42 けもの(仮題)La Bête(横浜フランス映画祭2024) 2.3
43 マダム・ウェブ 2.3
44 落下の解剖学 2.3
45 ダム・マネー ウォール街を狙え! 2.3
46 哀れなるものたち 2.3
47 エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 2.3
48 ザ・エクスチェンジ 2.2
49 DOGMAN ドッグマン 2.2
50 パスト ライブス/再会 2.2
51 リトル・エッラ 2.2
52 パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ 2.2
53 ボーはおそれている 2.2
54 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 2.2
55 瞳をとじて 2.2
56 ゴースト・トロピック 2.2
57 葬送のカーネーション 2.2
58 Here ヒア 2.1
59 美しき仕事 4Kレストア版(横浜フランス映画祭2024) 2.0
60 ハンテッド 狩られる夜 2.0
61 サウンド・オブ・サイレンス 2.0
62 ゴッドランド GODLAND 2.0
63 キラー・ナマケモノ 1.9
64 ザ・タワー 1.9
65 ポーカー・フェイス/裏切りのカード 1.9
66 マンティコア 怪物 1.9
67 アバウト・ライフ 幸せの選択肢 1.8
68 サン・セバスチャンへ、ようこそ 1.8
69 デストラップ 狼狩り 1.6
70 No.10 1.5
71 VESPER/ヴェスパー 1.5
72 フィスト・オブ・ザ・コンドル 0.5
番外
ソウルフル・ワールド 5.0
QUEEN ROCK MONTREAL 5.0
あの夏のルカ 5.0
私ときどきレッサーパンダ 5.0
FLY! フライ! 5.0
犯罪都市 NO WAY OUT 4.5
DUNE デューン 砂の惑星 リバイバル 4.0
メメント リバイバル 2.0
π〈パイ〉 デジタルリマスター 2.0
貴公子 1.5
ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター版 1.5
辛すぎる『大人は判ってくれない』
『WANDA/ワンダ』、『私、オルガ・ヘプナロヴァー』などなど、一筋縄ではいかない芯が通った映画を配給するクレプスキュールフィルムがまたやってくれた。
父親に虐待を受けてしまったために情緒不安定となってしまった9歳の少女ベニー。グループホームや特別支援学級など行く先々でトラブルを起こす彼女は、母親と一緒に暮らしたいと願うも、当の母親は…
全編とにかく救いがない。母親も、親子をケアしようとする者達の立場も分かるゆえに、無下に非難できない。非暴力トレーナーのミヒャとの生活により心が開きかけるも、それも持続が難しいベニー。彼女は決して優しい気持ちを持てないわけではない、だからこそ余計辛い。ラストの解釈は観る人によってまちまちだろうけど、『大人は判ってくれない』とダブったのは自分だけだろうか。チャニング・テイタム主演でハリウッドリメイクが決定しているとの事だが、はてどうなるか。
とにかくベニー役のヘレナ・ゼンゲルの演技がすさまじい。ハリウッドデビュー作『この茫漠たる荒野で』では言葉が通じないながらも、トム・ハンクス扮する主人公と次第に心を通わせていく少女を演じていたが、スタッフは間違いなく本作を観てキャスティングしたはず。末恐ろしい女優がまた登場した。
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