システム・クラッシャーのレビュー・感想・評価
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少年とケアラーが築く関係性のドラマに引き込まれる
子供をめぐる状況に真摯に向き合った良作である。思い通りにならないと感情の歯止めが効かず周囲に牙を剥き暴走してしまう一人の少年がいる。その思いを十分に受け止めきれない母親がいる。そして彼の精神状態をどうにか良い方向へ導こうと懸命にサポートするケアラーがいる。本作は決して安易なハッピーエンドで問題をうやむやにしようとせず、少年と父子にも似た関係性を築く男性ケアラーの視点を介して「この子に何をしてあげられるのか」の試行錯誤や現実に私たちの意識をしっかりと参加させていく。そこで両者の心が通じあって心が安らぐ瞬間もあれば、逆にすべての努力が無に帰したかに思える瞬間もあって、さらにケアラーにはケアラーの守るべき生活があるわけで、その線引きも大切なのだということを痛切に突きつけられた気がする。希望や絶望ではない。これだけの選択肢とサポート体制があることに興味が湧いた。日本の現状についても知りたくなった。
ベルリン国際映画祭 銀熊賞、その他各国の賞を総ナメにしました 。 ...
ベルリン国際映画祭 銀熊賞、その他各国の賞を総ナメにしました 。
主役のヘレナ・ツェンゲルは5才でデビューし10才でこの役を演じてドイツのアカデミー賞で史上最年少で主演女優賞を受賞。この後トム・ハンクスと2人でロードムービー『この茫漠たる荒野で 』に出演しゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされた。 とにかく演技が凄い。こんなに小さい子供がこれ程の演技をするのか?と強烈な印象を受けました。今後が楽しみな女優さんでした。
誰がどうすればいいの?
最初から最後まで見逃せない「救いのない」作品
ヘレナ・ゼンゲル演じるベニー(バーナデット)の攻撃性が凄まじく、
正直めちゃめちゃ怖かったです。
もうホラー映画といっても過言ではないくらいの恐ろしさであることに加え、
私自身、人生の折り返しを過ぎ、いまだに知らないことがあるのかと
本作を観たことの意義をあらためて感じた次第です。
ベニーのふつうの時と、キレたときのギャップが大きすぎて
本当に恐ろしくなりました。
身近にベニーのような子どもがいたら、まともに接することができるのか?>自分・・・
と、自問自答しながら観ていたのですが、
ベニーに寄り添う通学付添人のミヒャには心を開いたか!?と思わせつつ
そういうことではないという、本当にどうしようもない、解決しない、出口が見つからない
といった閉塞感しかない作品です。
それでもベニーは少しずつ成長してはいるものの、
やはり親なんでしょうね。
母親も完全にビビって一緒に住むことにひより、結局突き放してしまいますし、
そもそもベニーは父親からの虐待を受け(オムツを顔に押しつけられる)、今のようになっているわけですから
ベニーが悪いわけではないんです。でも、でも、モンスター級の子どもになってしまった。
それはやはり両親に原因があるのだと思います。
最近の邦画が顕著ですが、だいたいこういう子ども(から成長した青年・大人もですが)は
やはり親にその原因があるというのは、一貫して間違いないところです。
『あんのこと』のレビューにも書きましたが、本当に子どもに愛情を注げるご両親のもとに
子どもを授けてほしいと切に願います。
それにしても主演のヘレナ・ゼンゲルの演技は凄まじかったですし、素晴らしかったです。
今後にも期待しています。
クラッシャー
怒りを制御できない人というものはいるもので、原因の要素は色々あるのだろうが、この映画の主人公は過去のトラウマ、家庭環境、脳の構造…最強のクラッシャーとなっております バンバンビガロ~♪
周りの何人もの大人が愛を与えますが、それも限界がありますので(肉親ではないので)終始、主人公の行動にはガクガクブルブル((((;゚Д゚))))
韓国映画「ビニールハウス」みたいな結末だけは勘弁!と思いながらの鑑賞(終盤危ういシーンはありますが)
付添人ミヒァが「北の国から」みたいな田舎に短期で連れて行き、主人公も「人生最高の休暇ダヨ!」と喜んでいまして、普通のドラマなら一件落着、心機一転、強く生きてイコウ~オワリ!と、なるはずが、この映画、そんな甘くは…
田舎の小屋を見た主人公ベニー、「電気は⁉ネットは⁉」と言いながら、結構すぐ生活に馴染んでいましたが、その点だけは「北の国から」の純よりは良かった点でしたね オワリ!
ショッキングピンク
とてもリアル
映画館にて鑑賞しました。
以前の職場の同僚から「そういえばこんな映画やってるらしいですよ」と言われ、見てみました。
この、支援を行っても結局同じ状況を繰り返し、どんどんと居場所がなくなってしまう、という負の連鎖。また、彼女の年齢から支援の対象にならないというシステムの狭間、ものすごくリアルですね。
母親の「帰れる」と言って「やっぱ無理」とか、とんでもないですね。ただ、ああいう親、いますよね。無理といった理由もわからなくはないんですけどね。
にしても主人公ベニー役の俳優さんすごいですね。ビックリです。この演技でめちゃくちゃ映像に真実味があったと思います。
いくらさまざまなシステムを作っても、結局(システムにとっての)イレギュラーは存在してしまうんですよね。そのような存在を本当に救いたいと思うと、本来システム上では存在しない「善意」を頼らざるを得ず、支援を受ける側もそこしか頼るところがなくなる。。。(この映画だと、病院の特別措置入院やミヒャの家に泊めるという対応)
本作はドイツをはじめ世界の映画賞で数多く受賞しているとのこと。リアルさやあるある感はとてもよくできた映画だと感じますが、このような世界に関わったことがないであろう人たちが、どのように感じて票を投じたのかはとても気になりました。
関係者への取材や体験を行い、5年間のリサーチをして本作を作られたとのこと。様々な描写や展開があるあるでした。
私が愛してる。
最高だった!!!
特にラストシーン。ベニーを大肯定ですよ。
バックには最高にロックな音楽。飛び立てベニーですよ。
だって私たち観客は、この120分を通して、
ベニーのいい面をたくさん知ったんですからね。
優しさも、ありがとうって言う時の温かさも全部見てきたんですからね。
とはいえ、良くも悪くも私たちは、本当に見ていただけだ。
実際に、壊された、害を被った人たちがいる。
そして、観てるだけの私たちが何かを侵されることは無い。
ベニーと自分との距離を保っていられる。
しかし、私はどうしても自分の少女期とベニーの姿が重なってしまって、
俯瞰しては見られなかった。自分の中に取り込んでしまった。
だから、どうしてもベニーを擁護してしまう。
だけどきっと、この映画は社会のどこかに隠れているベニーの為に作った映画だろう。
そう思わずにはいられない。
エンディングソングが物語っている。
ニーナ・シモンの『Ain't Got No』
「何もない 愛もない」と歌いながら、
「それでも私は持っている。誰にも奪われないものを」
「命を持っている」と歌いあげる。
持たざる者たちに贈る物語なのだろう。
『17歳のカルテ』や『歓びのトスカーナ』に続く映画を見つけてしまった。
個人的には、『二トラム』や『オルガ・へプナロヴァ―』で気になっていた、
衝動を抱えた子供と親の物語が、しっかりと見れたような気がして良かった。
しかし、『二トラム』はかなりドメスティックなものだったけれど、
今作はとても社会的で、社会とは本来こうあるべきだと思いました。
社会に受け皿、というかシェルター的なものがもっと普及してほしいです。
小さな子供が家に居たり、影響受けちゃうと思ってしまう恐怖って分かるもん。
そんな時に、ただ突き放すんじゃなくて、程よく距離を保てる社会があるといいよね…。
ちょっと理想主義的だけれども。
それから、ブリー・ラーソンが出てた『ショート・ターム』が最も近いかもしれない。
あれは2013年の映画で、今作ではその先をきっちり描いていた。
ベニーはラストで、
本当に真の意味での孤独を味わうんだと思うんだけど、
それでも世界は広いと知ってほしいし、
この先もまだまだ色々なものを見てほしい。誰も傷つけずに。
愛情を注げない親は実在する、残念ながら
まずベニー役の女優さん、すごい!
この方の演技がなければ、本作は成立
しなかったでしょう。
というか・・・そういう方なのか?と
思ってしまうほどの説得力ある演技でした。
ゆえに、本作を通してずっと緊張感が
続きます。はれ物に触るような・・・
ってまさにこの感じなんだろうなぁ。
子供なんて悪いわけがない。
愛を注げない、愛を受け止めない親が悪いだけなのに
しわ寄せは子供に。つらい現実。
抱きしめて抱きしめられる。無償の愛の
大切さがいかほどか。
ベニーにとって大切なそれはついには人間以外に
たどり着くことになってしまう・・・。
ただただすがるような想いがつらすぎます。
支援できる大人にも限界があることも
辛い現実の一つなんでしょう。
親の愛情の代替は完全にはできない。
本作は親子関係をセリフで説明しません。
ほとんど。
システム・クラッシャーたるベニーの事実
ばかりを見せますから「あぁこの子は」って
思っちゃうかもしれませんが、どうか
注意深く見てほしいです。そう、この不審な
親子関係を見守る職員の気持ちで。
ベニーがオムツを顔に押し付けられた事実は
なぜ発生したのか?・・・差し込まれる一瞬の映像
最後のベニーと母親の抱擁シーンでの母の「目」
(女優さんの演技すばらしい)
本当、救いようがない現実を映像で
感じてほしいです。
ゆえにラストカットのベニーに
将来の明るさを感じることができなかった。
ハッピーを願いたいけど・・・。
彼女はどこに旅立ってしまったんだろう・・・?
ペドファイルを興奮させるだけの糞みたいな最低の映画
システムクラッシャーって呼ばれるんだ
枠に収まらない、収まれない人との関わり
なかなか無い題材の映画に期待と不安半々の気持ちでチケットを買ったが、観劇後の感想は見てよかったなでした。
ただ、他人にも勧めるかとなるとわざわざ推す作品でも無いのかも知れない。
作品に気が付いて興味を持った人が自分の選択でみるかを選び、そしてどう思うかという映画であった気がする。
以下内容に触れつつ感想。
ベニーがパニックになる瞬間は毎回心が痛かったし、スクリーン越しに見てるだけで恐怖を感じ、緊張感があった。暴れてしまうことがベニー本人ではコントロールでき無いというのも辛い。
ミヒャの赤ちゃんを愛おしそうに世話する姿は優しい女の子そのもので、そんな一面も知っているからであろうか母親の一緒に暮らしたいという気持ちはあの時は本当だったのだと思う。だが実際には母親自身もベニーが怖かったし、弟への影響もただの言い訳だけでは無い大きな問題に思える。後にスケート場で起こった事件のことを考えると、逃げた母親を一概に非難はできない。だがしかし、一度喜ばせておいて突如突き放す一連の流れは最悪なやり方のお手本のようだった。
母親逃走後、福祉課のおばちゃんがあまりの口惜しさとやるせなさに打ちひしがれ涙するシーンに思わずもらい泣きしてしまった。
最後、晴れ晴れしい顔で飛び出すベニーには、どうリアクションすればよいものか分からなかったが、スクリーンにヒビが入った演出はなかなかに秀逸だった。
リンダ・マンズみたい
物語の起伏が上がったり下がったりで基本的には同じ事の繰り返しが続いてラストに希望はあるのか?
誰も彼女を救えない、救おうとする人々は存在していて、救いようのないエンディングで幕を閉じるならばスケート場でのショッキングな場面が潔かったようにも不謹慎ながら思ったり!?
不良になったら『ワンダラーズ』で母親と住めたら『アウト・オブ・ブルー』みたいにベニーがリンダ・マンズを彷彿とさせる存在感で、グザヴィエ・ドランの『Mommy/マミー』やショーン・ベイカーの『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』なんか思い出したり、本作の続編がケニアを舞台にあったら観る気はしないだろうなぁ、ニーナ・シモンの「Ain't Got No,I Got Life」が流れるエンドロールに度肝を抜かれながらの違和感も!??
24-054
児童教育の難しさを考えさせられる良質な社会派映画
大人の手に負えないほどの暴力のコントロールができない少女の生活を描いた映画。愛情に飢えた女の子とそれを受け止められない母親と父親の暴力といった家庭環境の問題や児童教育の難しさを浮き彫りにする。おそらく児童心理や児童教育の綿密な現場調査に裏打ちされていると思われるので、筋書きに説得力があり、違和感なくストーリーに引き込まれる。この問題児である少女を演じる子役の演技力も凄いが、彼女に付き添って、生活指導、矯正する役割の(ミルコ・クロコップに似ている)お兄さんの演技が存在感もあっていい味を出している。彼の奥さんはインド系(中東系?)と思われる容姿だが、移民大国であるドイツの社会背景も垣間見れる。少女はこの先、どのように成長していったかは観客の想像に任すが、タイトルにある「システムクラッシャー」には、いい意味でも悪い意味でも監督の強いメッセージが込められていると受け取った。
メンタルクラッシャー
鮮やかなピンク色があまりにも悲しい
何ができるのか、できないのか
全31件中、1~20件目を表示