劇場公開日 2024年4月27日

「私が愛してる。」システム・クラッシャー JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0私が愛してる。

2024年6月21日
PCから投稿

最高だった!!!
特にラストシーン。ベニーを大肯定ですよ。
バックには最高にロックな音楽。飛び立てベニーですよ。

だって私たち観客は、この120分を通して、
ベニーのいい面をたくさん知ったんですからね。
優しさも、ありがとうって言う時の温かさも全部見てきたんですからね。
とはいえ、良くも悪くも私たちは、本当に見ていただけだ。
実際に、壊された、害を被った人たちがいる。
そして、観てるだけの私たちが何かを侵されることは無い。
ベニーと自分との距離を保っていられる。

しかし、私はどうしても自分の少女期とベニーの姿が重なってしまって、
俯瞰しては見られなかった。自分の中に取り込んでしまった。
だから、どうしてもベニーを擁護してしまう。
だけどきっと、この映画は社会のどこかに隠れているベニーの為に作った映画だろう。
そう思わずにはいられない。

エンディングソングが物語っている。
ニーナ・シモンの『Ain't Got No』
「何もない 愛もない」と歌いながら、
「それでも私は持っている。誰にも奪われないものを」
「命を持っている」と歌いあげる。
持たざる者たちに贈る物語なのだろう。

『17歳のカルテ』や『歓びのトスカーナ』に続く映画を見つけてしまった。
個人的には、『二トラム』や『オルガ・へプナロヴァ―』で気になっていた、
衝動を抱えた子供と親の物語が、しっかりと見れたような気がして良かった。
しかし、『二トラム』はかなりドメスティックなものだったけれど、
今作はとても社会的で、社会とは本来こうあるべきだと思いました。
社会に受け皿、というかシェルター的なものがもっと普及してほしいです。
小さな子供が家に居たり、影響受けちゃうと思ってしまう恐怖って分かるもん。
そんな時に、ただ突き放すんじゃなくて、程よく距離を保てる社会があるといいよね…。
ちょっと理想主義的だけれども。
それから、ブリー・ラーソンが出てた『ショート・ターム』が最も近いかもしれない。
あれは2013年の映画で、今作ではその先をきっちり描いていた。

ベニーはラストで、
本当に真の意味での孤独を味わうんだと思うんだけど、
それでも世界は広いと知ってほしいし、
この先もまだまだ色々なものを見てほしい。誰も傷つけずに。

JYARI