「【”伝統への固執は進歩を阻む。”保守的思想が蔓延る北マケドニアで実際に起きた男性のみの伝統儀式に女性が参加し”幸せの十字架”を手にした事から起こった出来事をアイロニック&ユーモアを塗して描いた作品。】」ペトルーニャに祝福を NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”伝統への固執は進歩を阻む。”保守的思想が蔓延る北マケドニアで実際に起きた男性のみの伝統儀式に女性が参加し”幸せの十字架”を手にした事から起こった出来事をアイロニック&ユーモアを塗して描いた作品。】
■北マケドニアの小さな町で暮らす32歳のペトルーニャは、仕事も恋人もなく、鬱々と日々を過ごしていた。
就職面接でも冷たくあしらわれ、最悪な気分の帰り道、ペトルーニャはキリストの洗礼を祝う神現祭に遭遇し、女人禁制の祭事に参加してしまうが、見事に”幸せの十字架”を手に入れるが・・。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・32歳のペトルーニャは、外見がポッチャリした可愛らしく、歴史にも通じた聡明な女性だが、縫製工場での秘書の面接で、面接官の男から相手にもされない。
ー 最近見た「金の国 水の国」で描かれた愚かしきルッキズムを思い出す。-
・そして、彼女はむしゃくしゃしていたのか、帰り道に女人禁制の祭事に参加し、川に飛び込み見事に”幸せの十字架”を手に入れる・・、が。
ー ここからの、警察や司祭や十字架を手に入れられなかった男達の愚かしき姿が、シニカルに描かれる。
“アバズレなどと,言われながら・・。”そんな中、ペトルーニャは臆する事無く、目をしっかりと見開き対応する。芯の強い女性である事が分かる。ー
■女性リポーターは上司と思われる男と電話で”これは大事な事だから”と必死に取材を続ける。
・そんな彼女に、男性警官のダルコだけが、優しい。そして、彼は言う。”僕も君みたいに勇気があれば・・。”その言葉を聞き、涙を流すペトルーニャ。
<ラストも良い。漸く解放されたペトルーニャに司祭が掛けた言葉”祝福を・・”。それを聞いて、ペトルーニャは司祭に十字架を返す。
彼女は、”幸せの十字架”が欲しかったのではない。
彼女は、女性としての尊厳を認めて欲しかっただけなのである。
保守的思想が蔓延る国で、自らの意思を貫き通したペトルーニャの姿は尊い、と私は思った。>