「客席への信頼を感じる佳作」僕に、会いたかった 些事さんの映画レビュー(感想・評価)
客席への信頼を感じる佳作
不思議な作品だ。
正直言って、シナリオにはひっかかりがあり、特に終盤の展開は、物語のための物語だと割り引いても突っ込みどころが多い。松坂慶子の少女のような空気に助けられている部分が大いにあり、彼女以外が母親を演じたのであれば、かなりグロテスクな物語になっていた可能性が高いだろう。
それでも高い評価をするのは、全編を通じて感じられる一瞬の美しさや描写の繊細さが多少の粗を補っているからだ。とびきり良いと感じる瞬間がいくつもあり、特に、主人公が見せる一瞬の表情や、作中一度だけ無邪気に振る舞うシーンの瑞々しさにはハッとさせられる。
台詞も説明も少ない画面からは客席への信頼と挑戦を感じられた。
ストーリーを知ったうえでもう一度観ると違う風景が見られるかもしれない。佳作。
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