「複雑で裏表のある主人公を巧みに演じ分けた筒井真理子。」よこがお 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
複雑で裏表のある主人公を巧みに演じ分けた筒井真理子。
一言では言い現せない奇妙で巧妙に仕組まれた脚本だった。
(監督と脚本は深田晃司)
《無実の加害者へ転落した女性》
《横顔・・・反対側の顔や姿は見えない・・・裏の顔》
そして、
《ある女のささやかな復讐???》
粗筋
訪問看護師の白川市子(筒井真理子)は家族や患者から信頼される
善良な女性である。
仕事として通っていた大石家の患者の孫にあたる中学生のサキが、
ある日突然行方不明になる。
サキは10日後に帰ってくる。
特に性的な被害はなかった模様だ。
しかしこの事件は市子の人生を180度変えてしまうのだ。
何故ならサキを誘拐したのが市子の妹の息子・辰男だったから・・・。
そしてこの映画でもっとも大事なキーパーソンは、
大石家のサキの姉の基子(市川実日子)です。
基子は市子と親しいことを逆手に取って、
マスコミに次のようなリークする。
1、誘拐・・実は市子が甥の辰男の手引きをしていた・・と電話で仄めかす
2、市子は幼い辰男に性的な悪戯をした過去がある・・・
(この2つは誇張はしてあるが、根も歯もない嘘ではないのです)
マスコミの注目を集めた市子の生活は崩壊する。
☆仕事を失う
☆結婚が破談になる
☆居場所を去らねばならなくなる
《市子の復讐》
本当に、私は市子の逆側のよこがおが信じられない、のです。
市子の復讐に利用される、
第3のキーパーソン。
美容師で、基子の恋人の米田(池松壮亮)の存在。
リサと名乗る市子は米田に客として接近する。
市子のアパートからは米田の部屋が丸見え(!?)
基子が米田の部屋に出入りしているのを、凝視する市子。
そして米田を誘惑して、寝とる・・・のだが、
米田は、
「基子とはとっくに別れた」と告げる。
「好きな人が出来たから・・・」
それが理由だった。
ここで愕然とするのだが、
基子は市子に愛情を強く持っていた・・・
基子の好きな人、それは市子。
(市子の結婚を知らされて、不機嫌になる基子)
そこから基子の歪んだ市子への嫌がらせが始まった。
そして市子の生活を崩壊させた。
それにしても筒井真理子の演じる白川市子は、
謎、でした。
ヘルパーとしての誠実な市子。
結婚する予定だった訪問医師(吹越満)の息子への優しさ。
それらの姿と米田を誘惑する時の洋服とバック、靴。
別人の様にブランド品を身に付けて、お金持ちのセレブ。
有閑マダムとして米田と釣り合う熟年の魅力が溢れる。
(この市子の裏表の演じ分けの凄み)
筒井真理子は近年その存在感が注目されている。
舞台(鴻上尚史の第三舞台)で長年培われた女優。
品の良い奥様から悪女まで幅広い役をこなす。
この映画は最後まで観ていくと、
やっぱりこの女・白川市子・・・って、得体が知れなくて、
一筋縄ではいかない女。
ヘルパーをしている善良さ、
男(そして基子)を狂わせる魔性の女、
その二面性を表現する説得力には脱帽する。
しかし映画は時系列が辻褄が合わないところもあり、
白川市子に同感する事も出来ず消化不良気味。
凄い感動には至らなかった。
しかし心理劇としては優れている。
市子の犬の吠え声、
四つん這いになって、クンクン嗅ぎ回るシーン、
市子の狂気の片鱗を見た。