「きっかけ」よこがお ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
きっかけ
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人間長く生きていると良かれと思ってやった事で恨まれたり、思ってもみない事で反感を買ったりすることがあります。善き人間の象徴である市子が基子と深く関わらなかったら、善き人間のまま人生を全うできたかもしれません。逆に基子も何かのきっかけでニートになり、市子と知り合い彼女への独占欲を強めていっただけにすぎません。この二人の関係は極端だとしても、親子、恋人、夫婦、友人など、誰もが似たような経験をしているのではないでしょうか。
市子も基子もふとしたきっかけで人生が大きく変わりました。彼女達だけではなく、辰男も辰男の母親もサキもです。残念ながらこれは「努力」では防ぐ事ができません。努力不足や自己責任と言えるのは、運良く上手くいったから、運良く成功したから、運良くお金のある家に産まれたから言える幸運な人間の一方的な言葉なのです。人間は運に大きく左右され、人生は常に不条理で不安定で、善き人になるのも悪い人になるのも強者になるのも弱者になるのも紙一重なのです。この作品は今の日本で忘れられたその真理を思い出させてくれました。
深田監督の作品は前作の「淵に立つ」しか鑑賞していませんでしたが、鑑賞後言葉にならない気持ち悪さが残りました。日本映画界では非常に稀有な存在だと思います。また、筒井真理子さんの妖麗さやつかみどころの無い感じが、イザベル・ユペールを彷彿とさせました。私はヴァーホーベンの「ELLE」が大好きなのですが、あんな感じの作品を演らせたら日本一だと思いますし、是非作って頂きたいです。
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