「クズで下衆な台風家族」台風家族 KTさんの映画レビュー(感想・評価)
クズで下衆な台風家族
初日鑑賞、出演者の不祥事で公開日延期という不運に見舞われていたが無事公開されて良かった。
公開されているあらすじのみ把握して鑑賞したが当初の予想を大きく裏切る展開。草彅剛演じる主人公鈴木小鉄はなかなかのクズで下衆。娘ユズキへの態度やユズキから父親への蔑みの言葉など見ているこちらが呆れ憐れになる程。周りを固める弟妹の癖のあるキャラもあいまって、悲惨すぎて笑えてくるという。
しかし物語が進むにつれ小鉄の父親である鈴木一鉄の隠れた一面が露わになっていき、それぞれ親子の愛情が胸に迫ってくる。荒唐無稽な展開もあるが、その中で現代社会の問題や傾向を鋭く突き笑いにつなげる監督の手腕が光る。
主演の草彅剛はやはりうまい。感情が乗ってるようでどこか冷めている何かを隠している、それでいて一瞬で感情を爆発させ見ている観客にそれを納得させる。しかしやはりクズだし最低だなと思わせるがどこか憎めない。表情が一瞬一瞬で変化し素晴らしい。妻役の尾野真千子との相性が抜群なのであろうが、何度も会話を交わすわけでは無いのにふと交わる視線で夫婦の愛情と信頼が読み取れる。
物語の展開は最後までどうなるか分からずワンシチュエーション映画かと思いきや、後半に向かって怒涛の動きが始まり最後まで飽きさせない。
主演以外の共演者もみな上手く嵌っており素晴らしかった。特に一鉄役の藤竜也の存在感が凄い。彼の存在が物語の重しになっており、ともすれば小鉄はじめ弟妹達のドタバタで終わりそうな物語をしっかりとした作品に昇華してくれている。娘ユズキ役の甲田まひるの目力も良い、演技初挑戦とのことだが今後女優としても楽しみである。またクズな登場人物の言動に笑いをかみ殺して見始めたが、MEGUMI演じる妹麗奈の彼氏役で登場する佐藤登志雄のどこまでも愚鈍な演技で一気に声を出して笑ってしまった。もちろん今をときめく中村倫也の末っ子っぷりも炸裂しており必見。
笑って呆れて涙して最後にはぐっと胸が熱くなる、まさに台風のように怒涛の感情が交差する家族の物語。