「問題なくルパン作品として楽しめます」ルパン三世 THE FIRST トーリさんの映画レビュー(感想・評価)
問題なくルパン作品として楽しめます
ルパンシリーズ初のフルCG作品。劇場公開の1週前にはTVスペシャルの
新作ルパンも放映され話題性の高まった流れのなか観て来た。
3DCGアニメを見慣れていない人だとモーション等に違和感を覚える意見が
あるのかも知れないが、個人的には普通に観れた。
THE FIRSTというサブタイトルが示すとおり3DCGによるルパンのファースト
(第一作)だという区切りなだけであり内容はオーソドックスに「ルパン」で
あり、CGの強みを活かした豪勢で複雑なビジュアルとギミックが満載。
CGは作る手間は手描き作画より大変だが一度作れば視点・効果をいくら
でも変化させてボリュームのある演出が出来ると思っているが、上映時間の
制約からか、例えばブレッソンダイアリーの仕掛けや後半で超兵器が奮う
猛威など、もっとたっぷり見たい、深堀りして欲しいと思ったギミックが
ガンガン通り過ぎて行き、贅沢だけど勿体ないとは感じた。
以下は、同じく上映時間の制約のなかで描ききるのが困難だったのかもだが
私個人として採点上のマイナス要因と感じた点…主に登場キャラの描写に
関する不満点を長々と書く。
(※以下がっつりネタバレなので、注意願います)
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敵であるランベール教授の心情が若干分かりにくかった。
自らの研究と成果を認めさせたいという強い執着を見せる教授であり、
ブレッソンダイアリーの秘密に関係する理由でレティシアを引き取ったが
その才能に嫉妬し、あくまでレティシアを自分のために利用しているだけ
という態度を前半で強く表現しているのだが、レティシアを自分の手で処分
しろとゲラルトに命じられた時は躊躇しており、利用しているだけではなく
一定の親愛も持っていた事を匂わせ、最後は撃たれそうになったレティシア
をかばって死ぬ…と、このように後から字で書いてみれば嫉妬と愛情で揺れ
動いた末に選んだ結果として描写されていたと言えるかも知れないが、劇中
では私の感想としては「描写不足」。嫉妬9割、たまに魔が刺したように
助けてみる、程度。後半、超兵器を操ることで私が世界を支配できるんだ
みたいに増長した癖にあっさりレティシアをかばって死ぬという展開…
感情の振り幅がひどい耄碌した老人として表現したかったのかと思えたほど
で正直唐突に過ぎた。
同じく敵であるゲラルトも、少し弱いというか浅かった印象がある。
例えば天空の城ラピュタのムスカは、軍がバックについているがムスカ視点
ではあくまで自らの目的の為に軍を利用していただけであり、超兵器である
ラピュタを手中に収めることで野望をむき出しにする、要するにたった一人
で世界を支配しようと目論む壮大な悪役だった。本作のゲラルトの場合、
ナチ○と実は生きていた設定のヒ○ラーがバックであり忠実なナチの一員と
して描写されていたのだが、実世界有史において有数の巨悪として認識されて
いるであろうナ○スを持ち出しているわりにはゲラルトに同行している部下
メンバー以外ほぼ空気で、終盤秘密拠点となっている島の敵は到着前に全滅
させられている始末であり、わざと○チスをチープに描写したかったのだろう
かと想像してしまった。(長年の付き合いとはいえ銭形個人はともかくICPO
がえらくスムーズに拠点制圧に協力しているのもご都合主義な気がした)
超兵器の凄まじい破壊力の描写についてはさすがCG、過去最高クラスでは
ないかというものだと思ったが、人のいない土地や海上で何発か炸裂させた
だけで爆縮・消滅しており「あっさり」感が否めなかった。例えば観測した
どこかの国や政府が慌てふためくような描写でも一つはさんであれば世界の
危機感がもっと感じられて盛り上がったのではないかと思う。
最後にヒロインのレティシアであるが、最初はルパン一味=泥棒=悪人として
警戒しつつ、自身もランベールに認めてもらうためブレッソンダイアリーを
奪う=悪事に手を染めている事に苦悩し、自らのルーツを知った後はルパン
と共闘して豊富な古代知識で活躍する・・・と、問題なくポイントを押さえて
描かれている。が、一点不満があるとすれば終盤、ルパンと一緒に行きたいと
言い、陽の当たる世界が待ってるのに泥棒と関わることはないとルパンに制止
され別れる、という定番の流れになっているが、ルパンに対する「恋心」は
それほどではなかったように感じた。ルパンシリーズに登場するゲストヒロイン
が全員、カリオストロの城のクラリスのようにはっきりと恋慕の感情を持つ
必要はもちろん無いとは思うのだが、昨年TVシリーズのルパンPart5をがっつり
観た記憶が新しいこともあってアミ・エナンと比較して考えてしまい、せっかく
の“THE FIRST”なのだからそこをもう一歩大胆にいって欲しかったなぁ・・・
というのがレビューの名を借りたいち個人としての希望であった。
文章化すると素人が偉そうに批判がましいと思われそうでアレだが、
逆にいえば評価をマイナスする点は上記くらいで、基本的にはルパンシリーズ
の新たな地平と言える良作であり、今回は活躍シーンが少なめだと思った
次元・五エ門のアクションも3DCGを活かしてガンガンやれそうであり、
今後の展開に大いに期待したいと思っている。 以上
発展させて欲しいと思う。