「素晴らしい娯楽映画でした」劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III. spring song ごとうさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい娯楽映画でした
原作プレイ済み。4DXで鑑賞しました。本作最大の見どころはセイバーオルタVS士郎・ライダー組の決戦。死力を尽くしたライダーによる、スピードタイプの極致ともいえる戦闘は、他の追随を許さないクオリティでした。我を取り戻したセイバー(=士郎が抱いたかつての理想)にしっかり留めを刺した点も○。全編を通して映像・音楽ともに最高峰であり、娯楽映画としては文句なく☆5つです。
以下、マイナスポイントを挙げます。原作(PCゲーム)ファンである個人の思い入れによるものなので、原作を知らない方は、読まないことをお勧めします。
〇演出上の不満点
・黒バーサーカーVS士郎戦。
対峙した際の黒バーサーカーの圧力が、動画でありながら原作の一枚絵に負けている。「是、射殺す百頭」は目にもとまらぬ9連撃、のはずでしたが、映画のそれは大剣振り回し攻撃ですか。☆1つ減点。
・黒桜VS凛戦。
凛の苦しみが伝わってこない。宝石剣で使い魔を消滅させるには、一振りごとに全身の魔術回路を開いて…と、無茶をしていたはずですが「チートアイテムで楽勝!まぁ、私も苦労したけどね」になってしまいました。☆1つ減点。
・士郎の痛み。
投影の度に記憶を奪われ、五感を奪われ…という主観的な痛みが、剣に貫かれた外見と声優さんの演技だけでは充分に伝わりません。☆1つ減点。
〇ストーリー上の瑕疵
・桜の贖罪。
桜は人を殺めています。どんな形であれ、罪を償わなければなりません。原作では他者(士郎)が「(命を)奪ったからには責任を果たせ」「全てのことから桜を守る(一緒に責を負う)」と宣言したことで、曲がりなりにも赦された感じがありましたが、映画の言動からは伝わってきませんでした。その点を有耶無耶にされたどころか「罪の重さに潰されないよう生きて行かなきゃ」と罪人(桜)による独白。しかもチート(第三魔法+橙子人形)で愛しの彼(士郎)を復活。原作を忠実に再現していますが、余韻も何もあったものではありません。☆1つ減点。
ボロボロ涙を流しながらゲームをプレイしたのが10年以上前。変わってしまったのが自分なのか時代なのか判然としませんが、本作からは当時のカタルシスを微塵も感じないどころか、観賞後に怒りすら覚えました。まだまだ言い足りませんが、アニメとしては出来の良い素晴らしい娯楽映画を見せて頂いたので、☆1つ残させて頂きます。