「押して引く、引いて押す」ゴーストランドの惨劇 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
押して引く、引いて押す
並みの恐怖演出は押すだけだが、何度も引く。
引いて束の間の静けさのあと、また押す。
また引く。また押す。
また引くと、引いた先はパラレル。
ふつうは、安全圏にいて、見ていたのは悪夢である。
ここは逆。
じつは囚われたままで、見ていたのは理想。
魔物に捕まってしまった、
魔物はにんげんをバラバラにして遊んでいる、
次はわたしの番だ、
そんなジュブナイルがあったとする。
もし、それを、リアルに演出してしまったらどうなるか。
囚われの身で、再び、押しと引きの恐怖演出。
窮地から抜け出すが、また捕まる。
恐怖と暴力のすさまじい純度。
静けさと騒々しさ。脆い平穏と激しい絶叫。
古い調度。いびつな人形たち。強化されたTexas Chainsawのような母子。
痣、切り傷、瘤、血痕、ぱっくり開いた刀創。
地上二階地下一階、わずか二十坪のロケーションで、その緊迫を描き出す。
観る者は、救われること、救いが消え去ること、その山と谷を、ジェットコースターで駆けるがごとく、ぐったりとなるまで繰り返される。
日本映画で、恐怖だのバイオレンスだのイキっている鬼才にはパスカルロジェの爪垢を煎じて飲んでもらいたい。
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