ある町の高い煙突のレビュー・感想・評価
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映画としては楽しめない
日立鉱山の公害とその対策初期の物語で、先人の業績に敬意を評します。史実とは異なる部分も有りますが、日立鉱山創立後数年で世界一高い煙突という当時の最新公害対策を成し遂げた事は素晴らしいです。しかし、会社側が良く描かれすぎているのと、鉱山の出す公害の実態が軽く描かれているのが釈然としません。
日立鉱山が出来るまでの約300年間この地の鉱山は休止したりして発展しませんでした。主たる理由は採算性と鉱毒が農業に与える損害で有り、農業が重視されてきた結果です。
映画の初めに「農業従事者が虐げられていた」とナレーションが入りますがウソです。この地の農村は何度も日立鉱山に申し入れや、補償金増額交渉をしています。日立鉱山は設立時から補償金で対応してきました。公害対策をしたのは補償金が膨れ上がったのが主たる理由です。
銅の増産とムカデ風道の結果公害が酷くなった時に、農村は国に請願をして、国は日立鉱山に改善命令を出しています。農村側は鉱山の操業停止は殆ど要求せず保証金に関する要求が主でした。ただし、ムカデ風道竣工後は主人公の住む地域の公害が酷くなり、集団移住が検討されたのは史実です。
日立鉱山の黎明期は、鉱員に対してはブラック企業でした。人員確保が増産に追いつかなかったのでしょうが、社員は登場しても鉱員は登場しないのも不満です。
史実に関する苦言はここまでにして、映画としてはどうだったか?
途中でしんどくなる映画でした。主人公が大根。ラブロマンスは無駄。各シークエンスが退屈(地上波の2時間ドラマのよう)でした。
シナリオとカメラと編集に芸が有りません。
当時の公害の被害は酷く、先人の達成は色褪せるものでは有りません。だからと言ってこの映画が素晴らしいと感じませんでした。
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