「こんなブラックスワンは嫌だ(笑)」キングスマン ファースト・エージェント pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなブラックスワンは嫌だ(笑)
キングスマンシリーズは良かれ悪しかれポップコーンムービーだろ、と思って鑑賞しに行ったのが、見事にやられました。徹頭徹尾シリアスです。
古代〜中世〜近代文学は好物なので、初っ端からアーサー王の話題が始まるのはとてもワクワクしますが、「いつまでこの格調が維持されるかな?」と思いつつ見ていたら、ずーっとそのまんま。クスッと笑えるユーモアや、1〜2作目に繋がるトピックに膝を打ちたくなるシーンは時折ありますが、品格ある雰囲気は崩れません。
ラスプーチンとの対峙に及んでも、空気は変わらなかったので、もうこれはこのまま最後までいくのだな、と確信を得ました。
もちろんスタイリッシュな戦闘シーンは期待を裏切りません。しかし、前2作品よりはCG比率も少なく、役者の身体能力が問われるのも観る者には嬉しいです。
とりわけ、リス・エヴァンスの怪僧ぷりったら!このテのヴィランでラスプーチンに匹敵するのはフー・マンチューくらいだと思いますがラスプーチンはなんたって実在の人物ですからねぇ。演じた役者は数多おれど、リス・エヴァンスの怪演は他の追随を許さない気がします。彼の役者としての評価を大いに上げる一作となったのではないでしょうか。
1812(序曲)やカリンカを織り込んでのラスプーチンのダンス。スピン(グランド・ピルエット?)は、くるみ割り人形で脳内がバレエモードになっていたので黒鳥の32回転(グラン・フェッテ)が重なりました。こんなブラックスワンは嫌だぁ(笑)
まぁ、コサックダンス=ホパークは元々モンゴルから持ち込まれた東洋武術であり、銃や剣を用いた曲芸的テクニックに昇華されたと聞きますから、ホパークと戦闘アクションの親和性は非常に高いでしょう。21世紀の新しい武装舞踊を生み出したリスと監督&スタッフに喝采です。(特別映像みたいに、BGMがボニーMでなくて良かったぁ。あれが流れたらストーリーに関係なく爆笑しちゃうよw)
今秋は、娘の勉強を手伝って1次大戦前後の世界情勢は個人的にかなり掘り下げて調べたばかりだったので、実にタイムリーに楽しめました。ラスプーチンとロシア宮廷関係を説明するのだけは彼の艶聞や絶◯・巨◯ネタに触れないのは難しく、JCには話すに話せず軽めに流し「興味があったら自分で調べてね」と言うに留めましたがw
しくじれば貞操の危機。コンラッドがポリーに「絶対、毒を入れてね」と念を押すのは息子と顔を見合わせて笑ってしまいました。シリアス調の中で数少ない微笑ましいシーンw
西部戦線におけるコンラッドの戦闘シーンには、微塵もキングスマン流の「舞」は入らず、どこまでもリアリズムに寄せています。ここはそういうイジリを入れちゃいけない!という監督の意志を感じました。これまでマシュー・ヴォーン監督は私の中で「比較的気に入っている監督」という位置付けでしたが、この英独戦シーンの描き方で「特に気に入っている監督の1人」に昇格しました。
しかし、コンラッドが、まさか、、、なぁ。(ネタバレしてはならない箇所かと思いますのでご自身の眼でお確かめ下さい。)
とにかく、息子に「西部戦線異常なし」を観せねば。
「コンラッドは責任を果たした。」の台詞には、英雄ホレーショ・ネルソンの「英国は各員がその義務を果たす事を期待する。」「神よ、感謝します。私は義務を果たしました。」が浮かびました。
「ヴェルサイユ条約は厳しすぎる」の一言は、ラストシーン(中盤と同じですが)にて左のレーニンと対比される右の若者の正体を示唆しています。
(レーニンと19歳差なんですね。初めてそんなの意識したなぁ。)
ラスボスは、気付かなかったなぁ!
(だってさ!間違いなくロキシーのご先祖様でしょ?そんなおバカで悪い奴だなんて思いませんよ。ちなみにワタクシ、キングスマンのヒロインはティルデでもジンジャーエール(ハル・ベリー)でもなくロキシーだと信じております。今後の続編で再登場に期待します)
ハンプシャーのシーンで違和感は感じて敵側だとは思ったんだけど、まさかそこまでとは!手先や幹部、スパイじゃなくて当人そのものとは恐れ入りました。あ!そしたら「あれ」はUボートだったのか!今頃、気付いた。VODに落ちたらゆっくり再確認してみよっと。
英国とスコットランド、ウェールズ、アイルランドの確執についてはまだまだ勉強不足なのでもっと色々知らねば。(とりあえずブレイブ・ハートでも観るかなw)
改めてキッチナー伯爵について調べてみましたが、名前はホレーショ。ネルソンにあやかった命名でもあるんですね。
あと、ムネアツはランスロット。
コンラッド自ら任命したランスロットです。オックスフォード卿は「例の一件」のあと、まるで息子のように彼の面倒をみていたのではないでしょうか。描かれざるそんな一幕に想いを馳せるラストシーンでありました。
本作の台詞にもあった「cancerのように不快な」という病にまさか捕まってしまい、思うように映画も観られない日々が続いておりますが、万難拝して3ヶ月ぶりに足を運べたシアターで鑑賞したのが本作で本当に良かった!
個人的好みですが、文句無しの星5です。監督お得意のアイロニーよりも、今作は「ハート」を前面に打ち出し、全面に流れさせた作品でした。皮肉・風刺ももちろんたっぷりなんだけど、なんというか斜めに構えて冷ややかに茶化すんじゃなく、もっとホットで真摯な、ヴォーン監督が普段は隠している真実の顔を見た心持ちです。
闘病の身にはとても素敵なクリスマスプレゼントになった本作でありました。
(あ、「若者より中年が活躍する」というコンセプトは、3作品通してブレてないですねw
あと、ポリーとハリー。絶対血縁だよね?早く続きが観たい〜!)
※ちょっ〜と気になっちゃったんで12/27追記
ヴォーン監督の名誉の為に一言。
本作の撮影は「1917」より先です。そもそも監督は1917は観ていません。
「西部戦線異常なし」や「ディアハンター」の影響は多分に受けているでしょうけれど、そんな直近作品をこの御方が意識するはずないでしょうに。
コメントありがとうございます。
いやはや、史実をここまでいじくって楽しませてくれる映画はなかなかないですよね。
マタ・ハリは米大統領をもお色気で陥れたのかと、ちょっとwikiで調べてしまったほど興味深い史実ばかりでした。
トイレに入ったら同じく「キングスマン」を見た男性同士で会話していたのが聞こえたのですが、「難しい」と感ずる方が多いんでしょうね。キングスマン前2作を予習するより、世界史を予習する方がいい映画だったとは・・・
大変失礼しました💦
年を取ると記憶が…
血縁関係があった方が次回観るときに思い入れが全然違いますよね。
ちょうど、ゴールデンサークルを観ていたんですが、すっかり忘れていましたが、こちらも最後にキングスマンの店に男性が訪れるシーンで終わっていました。
次のキングスマンはどちらの続きなのかな?
pipiさんは007が好きなんですね。
私も全部観てないですが、けっこう好きです。
DuranDuranが好きとのコメント見て、私も大好きです。
外国人の、コンサートに行った唯一のグループです。
主題歌になって、嬉しかった記憶と、次作のa-haの主題歌も嬉しかった記憶もあります。
パタリロ!と言えば
翔んで埼玉の撮影中止がとても残念です。
999は確かキレイな画面で上映されるみたいですね。
pipiさん初めまして☺️
コメントありがとうございます。
外国人の顔はわかりにくく、アーチーとは
わからなかったですよ。
初代メンバーに、なった、経緯を想像しつつ、パート2かな
pipiさんはじめまして!コメントありがとうございます!
劇中の気になっていた曲、pipiさんのレビューに答えがあった!
チャイコフスキーの1812(序曲)だったんですね。ありがとうございます!
度々すいません。珈琲を飲んで目が覚めました。
変わらぬ、精緻なレビュー、勉強になります。
「cancerのように不快な」・・暫くレビューを拝見しないなあ、と思っていましたが。御身体ご自愛くださいね。
では、又。
おはようございます。
情報、ありがとうございます。
最近は、新作レビューは100%ネタバレ設定しています。
レビュータイトルで分かってしまう事もあるので、気を付けていますが・・。
では、又。ちょっと、二日酔・・。