「豪華絢爛」キングスマン ファースト・エージェント ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
豪華絢爛
キングスマンシリーズは視聴したことが無かったので試聴しようと思いましたが、シリーズ前日譚に当たる作品のようなので、敢えて何も見ずにキャラクター情報だけ仕入れて鑑賞しました。
率直に言って超超超面白かったです!近代の歴史はかなり好きな方ですが、歴史上の人物のもしもの強さをこの作品は徹底的に描いているのがまず面白かったです。
序盤の敵として立ちはだかるラスプーチン、コイツがいきなり強いです。巨根で女性を魅了していたというどう処理すれば良いのかどうか分からない情報や、暗殺されていたというのも知っていましたが、この実際の登場人物の物語への落とし込みの仕方が忠実で見事だなと思いました。殺したと思いきや生き返ったり、氷の中に沈められたり、額を撃ち抜かれて死んだりと、どこかフィクションめいてるシーンですら史実通りで、その暗殺を実行しているのがオックスフォード公率いる英国紳士スパイチームというのも面白いです。キレッキレのコサックダンスアクションという新境地を切り開くようなとんでもアクションがとにかく楽しいですし、剣捌きが素晴らしいスピードで展開されますし、とにかく殺しにかかっているというのが視覚的な面白さがスクリーンを超えて伝わってきます。「終末のワルキューレ」という偉人が異種格闘技戦をする漫画が好きなので、製作陣の考えたもしもこの歴史上の人物がこんな能力を持っていたらを、あるがまま実行する製作陣、大好きです笑。
基本的に多くの人物を歴史上に実際にいた人物たちをベースに敷きつつも、戦闘能力を底上げしたような人物たちが勢揃いしているのも歴史好きをワクワクさせてくれます。
敵サイドはかなりの人物が出てきますが、英国紳士スパイチームはオックスフォード公、息子のコンラッド、世話係のポリー、執事のショーラという僅か4人での構成というのも物語に深みをもたらしてくれています。特にショーラのキャラクター、とにかく良い人感が出ていて一瞬で好きになりました。
アクション映画としてこの作品を観にきましたが、戦争映画としての魅力が詰まっていたのも最高でした。戦闘の最前線で戦うコンラッドの姿が描かれます。「1917 命をかけた伝令」のようにいつ死ぬか分からない恐怖に苛まれながも、国のためにというある種洗脳にも近い教えを忠実に守り抜くコンラッドの姿は見ていてとても辛いものがあります。オックスフォード公はコンラッドが戦線に立つことに否定的でしたが、これを親子関係のもつれに当てはめて描いており、人類がやらかしてきた歴史、戦争に対してのアンチテーゼとも取れるような描写でした。戦争を起こしたところで何も誰も幸せにならない、覆すことのできない歴史を映画の中の世界だけでも覆してみせるという製作陣の強い意志がオックスフォード公に託されているのも上手で憎い展開です。
最終決戦の舞台が崖の上というのも、逃げ場のない緊張感あふれるフィールドなのも最高です。オックスフォード公が飛行機から飛び降りる際に風に煽られ、羽根につっかえてしまい、ギリギリでパラシュートで脱出するというスリル満点の映像から嘘のように崖下に引っかかり、そこに山羊がいてベロベロするという、コメディなのかなって思うくらい楽しいシーンでした。ナイフを装着してアイスクライミングするシーンも良かったです。
案の定崖の上で山羊が待機して襲ってくるのも乙です。
オックスフォード公がムキムキ男とガチのタイマンをして劣勢になる中、地上ではポリーが援護射撃、ショーラが一気に駆け抜けてゆく爽快なアクションが楽しめました。特にショーラの跳躍力が素晴らしく、石を駆け上がっていく映像は子供心に戻ったようなワクワクがやってきました。PG12指定にベストマッチしたような爽快な殺戮はグロすぎず、でも浅すぎない、丁度良いバランスでした。敵の銃弾がポーラのいる小屋に大量に放たれますが、これがやりすぎなくらいぶっ放しているので面白いです。そして石に飛び乗った瞬間に崖の上と繋がっているロープをポーラが射抜き、見事反動でぴょーんとショーラが高く舞い上がっていきます。ショーラ高所恐怖症なのに大丈夫なのか(笑)と思いつつ、その勢いでムキムキ男の首を切り落とし、転がっていた体も崖下に落っことすという遠慮のない悪趣味さ全開なのも最高です。
最終決戦は、今までの殺戮のほとんどに関わってきたモートンとのバトルです。魚雷を駆使したり、山羊を容赦なくぶった斬ったりと、悪役に適任すぎる人です。剣と併用した銃のデザインも素晴らしく、正々堂々かと思いきや不意打ちで機動力を奪ったり、手榴弾を放ったり、フェンシングのような剣捌きと、とにかく見飽きない戦闘シーンが続きます。カメラもぐわんぐわんと動き、大袈裟なくらい暴れ回るという、コサックダンスアクションのテンションを一回り上げたような面白さがそこにはありました。手持ちカメラでの緊迫感もこのような大作には珍しかったので新鮮さもあり良かったです。
泥臭いまでの殴り合いも展開され、どっちが勝っても負けてもおかしくない接戦が繰り広げられますが、最後の最後で山羊がモートンの足を角で突き刺し、形勢逆転したオックスフォード公がモートンを崖から容赦なく突き落とすという泥臭いけれどカッコいい締まり方でした。ただ降りる手段がないなとオックスフォード公とシャーラの談笑が緊張をほぐしまくってくれてまた最高です。
そしてキングスマンという普段通いしている高級紳士服テーラーを買い取り、スパイ組織「キングスマン」が誕生する…!という激アツ展開で幕を閉じます。ポストクレジット後にはこの手の作品の常連のヒトラーがやって来る…!Fin~。
とにかくド派手で楽しく激しい映画でした。様々な映画を基盤にしつつも、魅力的なキャラクターたちが織りなすアクションに心躍らされました。最高のクリスマスプレゼントいただいた!とりあえずシリーズ2作を観て、続編も待ちわびようと思います。
鑑賞日 12/24
鑑賞時間 12:05〜14:30
座席 G-2