「旧来のクリエイティブ信仰など意にも介さぬ青春映画のアップデート」エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
旧来のクリエイティブ信仰など意にも介さぬ青春映画のアップデート
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インタビュー記事で、本作の監督がジョン・ヒューズの青春映画がピンとこないと言っているのを読んだ。目からうろこが落ちた気がした。というのも、ジョン・ヒューズが生んだ青春学園映画を、すっかりタイムレスなジャンルのスタンダードだと思い込んでいたからだ。
この映画の主人公も、周りに溶け込めず、他人と関わる勇気がない思春期の女の子という、青春映画で繰り返し描かれてきた主人公像を描いているが、明らかに違うのは、自分自身の価値を見つける物語ではない、ということだと思う。
多くの青春映画だと、あれやこれやがありまして、主人公が自分の夢や本当にやりたいことを見つける、というのが大半のパターン。しかしこの娘には何もない。少なくとも今のところは。ユーチューバー活動も、クリエイティブな欲求からではなく、単に似たことをやっているユーチューバーの受け売りで、知性はあっても、独創性があるわけではない。
しかしそれがなんだというのだ。映画の主人公に選ばれるのは、光る才能を持った人間でないといけないのか? いや、そんなアンチテーゼというより、本作は、本当にフラットに、現代の青春の現実を描いているだけではないのか。年配者の凝り固まった先入観を、ガツンガツンとぶち壊してくれるような映画だ。
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