劇場公開日 2019年9月20日

  • 予告編を見る

「ありのままのその先が見たい」エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ありのままのその先が見たい

2019年9月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

クールって何?
自分らしさって何?
この映画が伝える答えも、ケイラが動画で話していることにも、その通りだと思うし私の中にもその考えはあるし共感もできる。
でも、鑑賞後に残るこの辛さって何?

この手の映画、イケてない女子が悩み拗らせ八つ当たり最後にちょっと成長する映画、よくあるな〜とは思いつつ結構好きである。
自分が10代だった頃の学校生活や日々感じる疎外感と重ねたりして、普遍的だけどやっぱり大切なことを再確認して、泣いたり笑ったりして。

ただ、今回はちょっと、現在の自分の状態的に、この作品に素直に向き合えなかった。

まず、現代の15歳の女の子へ向ける私の視線や感情の変化に驚く。
思春期真っ只中の彼女よりも、お父さんの気持ちの方がビンビンに伝わってきて堪らない。
オリヴィアのお姉さん感も結局はまだ高校生だし、みんな可愛いもんだな〜なんて考えてしまう。
ほんの少し前までは全然主人公目線で捉えていたのにね。大人になったな。

物語は王道ながらもユニークさが光る面白い話だった。
繰り返し流れる音楽の効果が強い。
バナナのくだりやお父さんとのやり取りは笑えるし、エイデンのいっそ清々しいほどのゲスっぷりにニヤリとしてしまう。
SNS全盛期の時代を多感な10代が過ごすってどんな感じだろう。mixiの時代とはまた全然違うよね。

ちょっと頼りなさげな父親のまっすぐなメッセージに涙。
ケイラの悩みもストレートで刺さる。
育成失敗だ!と人のせいにしないのが偉い。そんなの絶対ぶつけちゃ駄目だった。

胸に刺さるシーン、刺さる言葉、表情、たくさんある。
笑顔が可愛いケイラがどうか傷付かないようにと願う気持ちももちろんある。
ただ、結局またどうせこれか…みたいな少しの失望を感じたのも事実。
イケてるガール達の描き方もなんだか極端だし、この手の話の表面をなぞっただけのようにすら思えてしまったのが残念。

「自分の価値を大事にする」「自分のことを愛する」そんなのもう分かってる、分かってるのよ。
別に私のことはそんなに嫌いじゃない。
仕事は楽しいし趣味を充実させているし好きな人はたくさんいるし友達もいるし、昨日だってすごく楽しい一日を過ごしたし。

この人生は私が主人公の映画なのよ!と思って前を向いて生きているつもりではある。
でもやっぱり対相手となると、ちょっとした自信だとか勇気だとかってどうしても萎んでしまうじゃない。
それって他人に愛されないとなかなか乗り越えられなくない?
人に合わせて自分が変われる面白さもあるじゃない?

私が部屋で独り虚しくボロボロ泣いても、それを情緒たっぷりに演出してくれる監督はいないし、綺麗に撮ってくれるカメラマンはいないし、ハッピーエンドにしてくれる脚本家はいないし、この姿を観て一緒に泣いてくれる観客もいない。
などと最近ついつい思いがちだったので、このいじらしい映画を素直に受け止められなかった。
というか自分の現在のネガティブと虚無感をどうにかしないと。

そろそろ「ありのままの自分を愛する」のその先が見たい、なんて映画に対して求めすぎなのかな。
そんなの自分で見つけろってね。
まあ考え方も感じ方もその時々、色々と影響されやすいだけなので致し方なし。グダグダ自分語りもやめておかないとね。

KinA