「ポップでキュートなハートフルラブコメディ」リアム16歳、はじめての学校 しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
ポップでキュートなハートフルラブコメディ
秀才の息子リアムをひとかどの成功者にしようと、一度も公立校に通わせず、自宅で英才教育を施し大学受験を目指すママクレア。
息子にベッタリ、過保護、期待過多、何でも干渉管理と、字面で見るとかなり気持ち悪いモンスターペアレンツに思えるが、純粋で素直にママを愛する息子、まだ若くお茶目でキュートな母親のキャラクター付けと、軽妙でコメディタッチな雰囲気が、物語を楽しく口当たり良いものにしている。
息子とママの親子間系も、学校生活で周囲に馴染まないリアムの特殊性も、初めての恋愛感情も、ベッタリどっしりと粘着質にならず、サラッと軽く微笑ましく描かれているのが良い。
明らかな悪者は存在せず、登場人物皆、何処かずれててでも憎めない、そこここにいそうなキャラクターばかり。
親の管理下にあるリアムも、息子の反抗に戸惑うクレアも、義足のアナスタシアも、悲劇的被害者にはならず、明るく前向きなのも良い。
人物の性格描写や背景が細かく描き込まれてはいないのだけど、ちょっとした台詞や表現で、何となく察せられるのが上手い。アナスタシアの義足の経緯とか、クレアが学生出産のシングルマザーであるとかね。OPの、ホームビデオ調のクレアとリアムの過去シーンなど、あれだけで親密な親子関係が窺い知れて絶妙。
ポップでキュートな音楽やビジュアルので描かれる学生生活が、若々しく爽やか。
恋の衝撃や、少しずつ自立していく親子間系を、リアムが大好きな天文学に置き換える表現も、彼らしく個性的でお洒落。
短いスパンでパパッと挟まれるギャグが軽快で楽しいのだけど、唐突なものもあり、多文化グラブやダンスのエピソード等、ちょっと解り辛かった。
ちょっとしたエッチネタも多いが、大人ならフフッと笑える程度の軽さで、デートにも良さそう。因みに、トロイの件の意味が解らずググったら、コンドームの商品名で隠語として使われる事があるらしい。こんな事でトリビアを得てしまった(笑)
人生は一度きり、誰もが初めての経験なんだから、恋も、親になるという事も、これが成功という社会的に提示された正解があるとしても、なかなかそうはいかないのが現実であり、当たり前だろう。
喧嘩して、失敗して、親子関係も自分の人生も、徐々に自分達らしく新しいやり方を模索する二人。明るい未来を想像させるラストも、楽観的な気持ちで終われて嬉しい。
放題がややダサめというか、この楽しさポップさが伝わらず、若者世代の興味が引けずに勿体ないのではなどと思ったのだが、原題を見たらそっちはそっちでダサめだったので、まあ意図通りで正解なのかな(笑)