「ダークファンタジーの傑作になるのではないか」劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明 あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
ダークファンタジーの傑作になるのではないか
この作品は、まだ解決していないが、この調子で進んでいけばダークファンタジーの傑作になるだろう。
キャラクターはかわいらしい絵柄で、夢や希望、冒険、友情という少年漫画の定番テーマをちりばめながらも、胸をえぐる残酷さがある。
描写の残酷さもあるのだが、むしろ、精神的な残酷さが強い。
注意しておきたいのは、残酷趣味のエンターテイメント、と片付けることができない作品だということだ。
物語を説明しておくと、
ヒロインのリコを中心として、レグというロボットの少年が、アビスと呼ばれる、縦穴の底を目指して旅をする。途中でナナチという獣のような姿をした、少年か少女かわからない人物に出会い、一緒に旅をする。
本編は、彼らが第五層に到達するところからはじまる。
第五層には、前線基地があり、そこから第六層に降りることができる。基地にはボンドルドというマッドサイエンティストのような男がいる。彼は人体実験を繰り返している。実は、ナナチも彼の実験のなれの果てなのだ。
第五層では、ボンドルドとの戦いを中心として、少年少女の成長が描かれる。
冒険の舞台となるアビス。
深い穴に潜っていくという設定は、自分の心の中に深く潜っていくという、成長をイメージさせる。つまり、穴に潜っていくという設定が、そのまま、少年少女の成長という、本作のテーマを示している。
表面的には、リコは奈落の底に母親を捜しにいく。レグは自分が何者なのか知るために降りていく。ナナチは彼らを助けるために同行している。
このシチュエーション、おそらくオズの魔法使いなのではないかと思う。
子どもたちは、深い縦穴に潜ることで、自分自身を知り、そして、おとなの世界を知る。それは成長のメタファーである。耐え難い痛みがともなうが、それを乗り越えることで成長していく。
リコが母親を捜して旅を続けるのは、同時に、自分が母親のような冒険家になることも意味している。
かわいらしい絵柄と残酷描写というと、まどマギが思い浮かぶ。今でも根強い人気のある作品だ。小生はイマイチピンとこなかったが、まどマギを絶賛する人たちは、メイドインアビスを観た時に小生が受けた感覚と似たような感覚を覚えたのではないかと思う。
素晴らしいアニメだが、鬼滅の刃のような大ヒットはしないだろう。子どもが観てどう感じるかはわからないが、子どもが成長していく過程を描いているのだから、子ども向けともいえる。しかし、子どもが観ても難しくてよくわからないだろうとも思う。
小生は。テレビシリーズを観ていて、とてもしっくり来た。そして、映画版がこのようなハイクオリティな仕上がりになっていたので、うれしく思う。最後までこのクオリティを保ってほしいと切に願う。