「過激さにのぼせた自己矛盾」劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明 今日は休館日。さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0過激さにのぼせた自己矛盾

2020年2月17日
iPhoneアプリから投稿

原作未読。アニメ視聴。

段々と死んでいくような“自殺的”旅路で描かれる死生感。隣り合わせる死の匂いと、引き返せない「アビス」という大穴の設定。アニメシリーズは非常に面白かったです。

ただしこの映画ではその「降りていく」という工程が描かれない。長いストーリーの一端を描くという構造上、仕方ないのかもしれないが、そこで何をするかというと、可愛らしいキャラクターでのゴア表現に終始する。そしてまぁこれが薄っぺらい。

可愛らしいキャラクターで重いテーマを描く、生々しいシーンを描くのは表現のギャップとしては面白いのだけど、それがメインになるのは本末転倒。この作品がゴア表現を楽しむものなのであれば、悪趣味であれ否定はしないが、死との距離感の中で命の質感を描く物語の本筋と相反しているのはどうなのか。

子供を解体してケースに詰めるという、恐ろしく過激な表現をしているにも関わらず、それに見合うだけの感情の重みを感じられない。必要性のない過激な表現は、過激であるための過激な表現は、軽薄な演出にしか映らない。B級ゴア映画の方が、随分と潔い。

あれだけの惨酷なシーンの連続の後で、笑顔で次の旅路に発つ3人はまるで白痴に見える。物語の本筋であるべき生命の質感を、この物語自体が軽んじてしまっているのではないか。

今日は休館日