「壮絶なほど美醜相まった表現性が我々の感性を深くえぐって魅了する」マックイーン モードの反逆児 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
壮絶なほど美醜相まった表現性が我々の感性を深くえぐって魅了する
正直、ファッションに疎い人でもこのドキュメンタリーにはかなり圧倒されるのではないか。それほどマックイーンという男は孤高かつ謎に満ち、映画的な人生を生きた。そんな彼が手掛けるファッションショーもこれまた実に映画的だ。ただ美しいだけのショーとは異なり、嫌悪する人は嫌悪する、魅了される人はとことん魅了される、壮絶なまでの美醜が相まった表現空間がそこに降臨している。この世界において彼は文字通り神なのである。
また、彼の表現性のすべてを祝福するかのように本編で鳴り続けるのが、マイケル・ナイマンの音楽だ。実際にマックイーンも創作活動に彼の音楽を好んで何度も聴いていたのだとか。この寄せては返す波のような高揚感にも、我々観客をこの男の半生に熱狂的なまでに釘付けにさせる大きな要因がある。と同時に、表現すること、常に自分の壁を突破し続けることの苦悩について、胸が苦しくなるほど突きつけられる作品でもあった。
コメントする