僕たちのラストステージのレビュー・感想・評価
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そのラストには、ずっと浸っていたくなる優しさと温もりがあった
とりたてて秀でた見せ方があるわけではない。むしろそれらは泥臭いくらいの飾り気のなさで、良くも悪くも一時代を築き上げたお笑いコンビの友情を真正面から描き切る。しかも描かれるのは彼らがキラキラと輝いていた全盛期ではなく、旬から遠ざかった衰退期であり困窮期なのだ。
とはいえ、スタッフとキャストは結果的にこの素材の味をそのまま生かし切り、人生の枯れたこの部分を「もっとも人間的な味わいが出た時期」として見事に結実させて見せるのである。
二人の間で何百回も、何千回も繰り返されてきたネタを劇中でも愚直に繰り返して見せることには意味があったのだ。それはルーティーンなどではなく、一回一回が命がけのステージであり、一挙手一投足が友情の結晶。そのことが自ずと伝わってくる脚本は、逆説的に言って、最高に洗練されたつくりであったことに痛いほど気づかされる。この優しい時間と余韻にずっとずっと浸っていたいと思えた。
スティーブ&ジョン・Cの最高のステージ
実在のコメディコンビの晩年を描いたドラマで、主演の二人、スティーブ・クーガンとジョン・C・ライリーはほとんど特殊メイクで共に最高の演技をみせたと言える。
シリアスな場面はもちろんだが、コミカルな場面、特にステージでのコントシーンは本当に笑えるし、コメディアンとしての能力を見せつけた。
スタンとオリーの二人は、休日を共に過ごすような友人関係ではなかった。ただ長年コンビを組んできただけかもしれない。しかしそれは、普通の友情を越えた、夫婦のような関係だったように思う。
スタンは女優を妻にし、オリーは脚本家を妻にした。それぞれスタンからみたオリー、オリーからみたスタンのような存在で、ある意味、二人がお互いを強く意識し必要だと思っている、絆の深さを感じさせた。
他にもいくつかいいセリフがあった。
ステージ上で何度か言った「僕たちは楽しかった」は、お客さんを笑わせるよりも先に、自分たちが最高のパートナーと楽しんだということだし、最後の船の上での会話で、「なぜ演技の練習を?」の問いに「他に何をする?」と答えるのは、自分にはスタンとオリーのコントしかないという表れだった。
スタンは常にオリーの演じるシーンの脚本を書き、君はこうする、君はああする、君はこう言う、と、さっきまで沈んだ雰囲気だったとしても急に楽しそうにオリーに語り、オリーはそれを至上の喜びであるかの如く聞く。
険悪だったりケンカしたりする場面もあるが、そういうことも含めて、全編を通した笑いと、二人の友情を越えた何かが混ざりあって、最後のステージでは感動してしまうのだ。
淡々としていてベタだけど泣ける…
ベタな展開なのだけれど、全体が淡々としていて御涙頂戴じゃないぶん涙を誘う。
長い時間を共有してきたのだというのを感じさせる2人。喧嘩の時にはスタンに怠け者と言われていたけれど、オーリーは最後まで2人で舞台に立つことを選んだ。
後半、スタンの目がずっと涙ぐんでいるように私には見えた。
それにしてもオーケストラボックス付きの喜劇の舞台とは。豪華で羨ましい。
いつの時代も笑いは大切
2人はビートルズの「サージェント・ペッパーズ」のジャケットにも載ってるようだ。
まず驚かされるのがジョン・C・ライリーの特殊メイク。汗までかいてるところなんてのも霧吹きしまくりで大変だったろうなぁ・・・実際のローレル&ハーディの映像を見て比べると、やっぱりそっくりに作り上げていた。
病室で脚を吊り上げてるコントや入り口の二つある駅など、どこかで見たことあるな~と感じるのですが、これもまた日本のコメディアンが彼らのコントを参考にしていたのだろう。ドリフターズのコントやカトケンなんてかなり似ている。吉本新喜劇だって似てるかもしれない。
1937年に絶頂期を迎えたコンビ。しかし契約の関係でごたごたしている間に旬が過ぎてしまったのだろうし、戦争の影響もあったのだろう。時代から見放され、テレビの普及の影響も受け、イギリスに渡った彼らの公演には客もまばら。お笑い世界の栄枯盛衰を見た気がした。
とにかく真面目に喧嘩していたも他人から見ればコントになるし、ずっとコンビを組むなかでも本音がぶつかり合うことは少なかったのだろう。オリバー・ハーディが水着コンテストの式場で倒れたことがきっかけとなり、互いを思いやる友情を再確認し、ともに生涯他人とはコンビを組まない固い意志が感じられた。もちろんアイルランドでの歓迎ぶりやステージは感動もの!なお、チャップリンとも組んだことがあると言ってたローレルにも驚き・・・
共に過ごした時間の長さ
かつての人気コメディコンビの晩年を描いたバディもの。
大元を知らなかったので、特別な感慨は無く。人気に陰りの見えたシニアコンビのツアーの行く末を追っていくだけの前半は余り起伏なく、やや退屈に感じた。
相手への不満を抱えながら共に行動していた二人が、不満を吐露して険悪になる辺りから、急速に物語が展開して面白くなってくる。
私には二人が、何だか、お見合い結婚の熟年夫婦のような距離感に見えた。
長年多くの時間を共にくらしてきて、欠点も嫌というほど見える、性格や意見の食い違いもある、煩わしく思う事もある。けれど、相手の好みも努力も知り尽くしていて、信頼し、誰よりも背中を任せられる。
友情でも、ましてや恋愛でもないけれど、共に歩んできた時間が、替わりのきかない、かけがえのないものになるという関係が、確かにあるのだと思った。
先の事を考え、納得して別の人間と組んだのに、いざ舞台に立った時、違う、駄目だと、分かってしまったんだろう。
聞かなくても解るコーヒーの好み、一つベッドに並んで温める冷えた相棒の手、ラストステージで手を取り合って踊るダンスの、舞台に落ちる影法師。そんな、二人の距離感の描き方が、とても好きだと思った。
時の流れは、容赦なく人を置き去りにする。相棒を失った時、絶世を風靡したコンビの片割れは、二人の辿ってきた道を、美しいまま封印する覚悟を決めたのかも知れない。
コンビが終わりを告げても、書かずにいられない創作者の性。それでも、その脚本具現化するのは、彼と自分の二人でなくてはならなかったのだろう。
禁句(痩せれ)。
地味。恐ろしく地味。何処がクライマックスなのか、測量しなけりゃ分からないくらい平坦な物語。こんなんでポロリんと涙こぼしてる俺もどうかと思うよ、全く。良かった、地味に。
画にはこだわる方なので撮影者のクレジットは必ずチェックしています。ローリー・ローズはぶっ飛びのオーバー・ロード、ヘルフロント、ペットセメタリーなどを撮った人。奥行きの作り方が好きやわぁ。それと風景。最初の宿のヘルっぷり。ロンドンの劇場外のワンショット。画面右隅にチラリと見える、暮れ泥んで行く空の美しさ。ストリートの切れ目から見えるビッグベンのカスミ方。この「隅っこ品質の高さ」が英国魂で好き。インド映画は、この精神を真似たんですかね。この点については、最近の日本映画が一番ダメだと思う。
コントな私生活に色を添える、奥様方の掛け合いも良かったが、二人共にダンナ愛に溢れる良いオンナで真剣に羨ましい。
実在のコンビの歴史を辿ったバディムービーは、何故か三ヶ国合作で98分の短尺もの。気負わずサラサラ流れて行く気の利いたセリフにニヤニヤしたり、ホロリとしたり。愛なんてものは、愛だと言わなければ、何者でも無い感情として流れ去って行く。合計、何年を共にしたかは不明だけど、ハーディーが倒れなければ、二人は互いへの愛情を語る事もなかったであろうよ。でも、俺たち、口に出したりしないよなぁ、普通。と言うか、友達に愛してるだなんて絶対に言わない。どんなに好きでも。一生、そんな事を口に出さずに済みます様に…と祈らずにはおられませんです。真面目に恥ずかし過ぎる。
ずっとコンビで続ける凄さ❗
良い時も悪い時もステージの上に
最後にホロッとする感動作だった!
落ち目になってしまった晩年のお笑いコンビが、ステージを重ねていくことで、人気を盛り返していく
ステージを降りてからも、日常会話の中からネタを見つけたり、ネタ合わせをして、場を盛り上げ、お客さんを増やしていく
その「笑い」にかける思いは、ベテランになっても、新人の頃と変わらない
彼らの間には、お互いに見つめ合えばわかる「あうんの呼吸」のようなものがあって、そんな二人の関係は長く連れ添った夫婦のようだった
そんな彼らは「言いたいことを言い合える関係」だからこそ、時にはケンカもするし、他の人に乗り換えようかなと思うことだってある
けれど、やっぱり、代わりになる人はいないから、元サヤへと戻っていくのだ
そんな二人の「いろいろあっても、やっぱり相方が一番!」という間柄を見ていて、いいなぁと思った
そこまで心を許しあえる相手には、なかなか出会えないからだ
そんな風に、裏側では、いろいろあるし、晩年になれば、体調を崩して、とてもステージになど上がれなくなってしまうこともあるけれど、それでも、そんな自分を押し殺して、ステージに上がった彼らはキラキラと輝いていた
そんな彼らの「これぞ天職!」という姿に感動してしまった
彼らは、お客さんを笑わせてこそ、生きられるし、お客さんの笑顔が彼らの栄養剤なのだ
私の隣の席には、外国の人が座っていて、彼らのギャグにずっと笑っていた
そこまで、彼らのギャグを理解できなかったのが残念だけど、彼らの思いには、心が温かくなった作品だった
日本のお笑いも
写し鏡
シンプルで王道、ほとんど思った通りの流れにしかならない優等生ムービー。
それでいい、それがいいし、それを観たくて劇場に足を運んだわけだけど、なんだかあまりハマり込めなかった。
終盤になるまで常にしんどさが消えなくて、心を嫌な風につつかれながら観ているようだった。
身体も人気も衰えていく。
老いや時の流れを身でもって実感する過程も、売り言葉に買い言葉の喧嘩も、周りの反応もすべてが苦しい。
冒頭で描かれる人気絶頂期ですらお金やプライベートでチクチクしていて、一番最初に二人の魅力をもっと叩き込んでほしかったなと思う。
そうしたらもっと素直に二人を見守って愛しくなれたのに。
巡業の際に起きる出来事に悉く気分が落ちてしまって辛かった。
終盤になってやっと一息つける。
今まで人の言うなりになってきたオリバーが本当に自分のやりたいことを優先できた瞬間にああ良かったと思える。
コントにのっとった二人の切ない和解のシーンも好き。
周りが何と言おうとどう見られようと自分の身体が悲鳴を上げようと、やりたいからやる、という強い意志が見えたことに心底安心した。
ラストステージはもうちょっと丁寧に観せて欲しかったけれども。
義務のように泣いてしまったけど、鑑賞後は空虚な気持ちになった。圧倒的に感情移入が足りない。
二人の妻が一番好きかもしれない。
ナチュラルに漫才みたいな掛け合いを始める良コンビ。
スタンとオリバーが正反対の人物像なのに倣うように妻同士も見事に正反対なのが面白い。
絶対にデルフォントが嫌いなイーダの態度本当に好き。
見た目も性格も声も話し方も全然違うけど、夫を愛するしっかり者なところは同じ。
最後の妻二人の表情にとてもグッときた。
鏡に映ったショットが印象的。
似ても似つかないスタンとオリバーだけど、相手は自分で自分は相手の精神を持って、写し鏡のようにお互いを見ていたのかなと思う。
実際のこのコンビについて全く知らなかった。最後に流れる実際の映像が楽しい雰囲気満載で笑ってしまった。
昔の芸能に敬意はあれど、その面白さはいまいちよくわかっていない。
あんな爆笑するようなものか?なんて思ってしまいがちだけど、ネタの面白さだけではなくて二人の雰囲気だとかその場の楽しさも加わって笑えるのかもしれない。
ストーリー自体は可もなく不可もなく、予想以上のものは無かった。
しかし結構細かいところで好きな点が多くて、飽きずに観ることができて良かった。
真顔で連発するギャグやお決まりの仕草なんかも可愛い。
劇中で明らかな死は描かれずとも、がっつり死に向かって落ちていくめちゃくちゃ太った人をずっと見ているのが一番辛かった。顎肉を超絶ぽよぽよしたい。
もっとハッピーな雰囲気だと思っていた。
最近あまりにも強く死を意識してしまって怖いので一旦リセットしたかった、なんて変な動機を持ってしまったのもいけない。
良い話であることに間違いないんだけど、ちょっと今の私には合わなかった。しかしなんだかんだ嫌いではない。
ゆでたまご食べたい。ぐりぐりと殻をむいて塩振って食べたい。
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