「共に過ごした時間の長さ」僕たちのラストステージ しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
共に過ごした時間の長さ
かつての人気コメディコンビの晩年を描いたバディもの。
大元を知らなかったので、特別な感慨は無く。人気に陰りの見えたシニアコンビのツアーの行く末を追っていくだけの前半は余り起伏なく、やや退屈に感じた。
相手への不満を抱えながら共に行動していた二人が、不満を吐露して険悪になる辺りから、急速に物語が展開して面白くなってくる。
私には二人が、何だか、お見合い結婚の熟年夫婦のような距離感に見えた。
長年多くの時間を共にくらしてきて、欠点も嫌というほど見える、性格や意見の食い違いもある、煩わしく思う事もある。けれど、相手の好みも努力も知り尽くしていて、信頼し、誰よりも背中を任せられる。
友情でも、ましてや恋愛でもないけれど、共に歩んできた時間が、替わりのきかない、かけがえのないものになるという関係が、確かにあるのだと思った。
先の事を考え、納得して別の人間と組んだのに、いざ舞台に立った時、違う、駄目だと、分かってしまったんだろう。
聞かなくても解るコーヒーの好み、一つベッドに並んで温める冷えた相棒の手、ラストステージで手を取り合って踊るダンスの、舞台に落ちる影法師。そんな、二人の距離感の描き方が、とても好きだと思った。
時の流れは、容赦なく人を置き去りにする。相棒を失った時、絶世を風靡したコンビの片割れは、二人の辿ってきた道を、美しいまま封印する覚悟を決めたのかも知れない。
コンビが終わりを告げても、書かずにいられない創作者の性。それでも、その脚本具現化するのは、彼と自分の二人でなくてはならなかったのだろう。
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