「そのラストには、ずっと浸っていたくなる優しさと温もりがあった」僕たちのラストステージ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
そのラストには、ずっと浸っていたくなる優しさと温もりがあった
とりたてて秀でた見せ方があるわけではない。むしろそれらは泥臭いくらいの飾り気のなさで、良くも悪くも一時代を築き上げたお笑いコンビの友情を真正面から描き切る。しかも描かれるのは彼らがキラキラと輝いていた全盛期ではなく、旬から遠ざかった衰退期であり困窮期なのだ。
とはいえ、スタッフとキャストは結果的にこの素材の味をそのまま生かし切り、人生の枯れたこの部分を「もっとも人間的な味わいが出た時期」として見事に結実させて見せるのである。
二人の間で何百回も、何千回も繰り返されてきたネタを劇中でも愚直に繰り返して見せることには意味があったのだ。それはルーティーンなどではなく、一回一回が命がけのステージであり、一挙手一投足が友情の結晶。そのことが自ずと伝わってくる脚本は、逆説的に言って、最高に洗練されたつくりであったことに痛いほど気づかされる。この優しい時間と余韻にずっとずっと浸っていたいと思えた。
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