母との約束、250通の手紙のレビュー・感想・評価
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互いの存在だけを信じた親子の愛
フランスの三島由紀夫とも評され。フランスのゴンクール賞を史上唯一、二度受賞した伝説の文豪、フランス外交官、映画監督までこなした天才。ロマン・ガリの自伝を映画化。
行きつけの映画館でポスターを見て惹かれ鑑賞!
第2次世界大戦下で翻弄された母と息子の絆を描いた壮絶な人間ドラマ。存在自体、この映画で初めて知り彼と母との生きた証を赤裸々に描いた本作を見た後は圧倒されるばかり
母のニナのホラ吹きとも思える。息子への過度な愛情と期待は昨今で言えば、アダルトチルドレンで子供を親の支配下におきたいかの様にも感じとれるが、戦時下時代背景や移民として何をしてでも息子の生活を守り、最良の教育を受けさす為にと想い賭ける母ニナはそれとは違った。周りからの軽視や貧困に負けることなく息子を生きる糧とし、信頼し甘やかすだけでなく時に非情に厳しくもある姿はパワフルかつ肝っ玉母ちゃんと思わせてくれ
過度な愛情を受けつつも、母の為だけに幼少期のある出来事で幼きときに悟ったロマン、自分以外に頼れる存在は母のみであり、2人の関係はふつうの家族では到底考えられないほどの絆で強力で、狂気じみ、情熱的で、破壊的でもあると同時に、この絆こそがロマン・ガリのアイデンティティーであり指針ともとれ、自然界の法則の如く通じると考えられる、みな誰しも親から子へと教えを受け継ぐということをこの物語は伝えているかのようで
物語は子供時代、青年時代、成人時代の3つで構成されており、母と息子の様々な困難にぶつかり紆余曲折を経て時には離ればなれになりながらもお互いを思いやる心、母は息子の為に、息子は母の為に、後半。激化する戦時と母からの送られてくる手紙に込められた想いと真実。冒頭で流れる「母親の愛のせいで、人生はその始まりの夜明けに、かなわない約束をしてしまう·····」のフレーズに涙腺をやられた。
母の愛は海よりも深しと感じさせられ見終わった後、自分の人生とは親の人生とはとしみじみと考えさせられ、脚本からキャスト音楽に至るもの全てが心に突き刺さり、静かに胸に作品の余韻と共に染み渡る傑作である。
最後の言葉
ヨーロッパに散り散りになっていたユダヤ人は、ドイツでだけ迫害、差別されていたわけではない。
相対的に高い教養や、彼らが肩寄せ合う姿、執念にも似た努力に、多くのヨーロッパ人は、何か恐怖のようなものを感じていたのかもしれない。
母親の狂気にも似たロマンを鼓舞する言葉の端々には文豪の小説についての事柄が盛り込まれる。
そして、流浪にも似た母国を後にする姿、ユダヤ人のオープンとは言えない集まり、正教(おそらくロシア正教)との一線を感じさせる場面、母国の一員として闘っているにもかかわらず差別されるストーリーには、迫害の苛烈さを感じてしまう。
そして、母親の執念は、死しても尚、その手紙がロマンを生に引き戻し、目標に向かって背中を押し続ける。
このロマンの一生を、波乱の生涯と呼ぶのか、数奇な運命と捉えるのか。
母親の死を知っても、ロマンは外交官になり、作家活動を続け名声を勝ち取り、家庭を持ち、子供にも恵まれた。
母親の執念の結果なのか、ロマン自身には母親の希望を叶えようとする使命感があったのか、それとも、この二人は実は、二人でひとりなのか、自分のイマジネーションをかき乱す。
そして、
自殺の前、ロマンは、出版社の担当者に宛てた手紙に「大いに楽しんだ」という言葉を添えてたそうだ。
迫害、死地を巡り、それらを乗り越え、妻を自殺で亡くして、何が見えたのだろうか。
壮絶さのみならず、僕の想像を超えすぎている。
やりすぎ
原作読むなら、映画のあとで
重すぎる母の愛と期待を一身に受けて、刻苦勉励するロマン。
ロマンは、現在のリトアニアで生まれ、ポーランドなどで幼少期を過ごします。
シングルマザーのニーナが大変パワフルな人。
アパートの中庭で、息子は将来ひとかどの人物になりフランス大使になってロンドンで服を作るようになるんだから、とか何とかまくしたてるシーンが印象的。
親の過度の期待に押し潰されてしまう例も少なくないと思うのですが、このロマンはのちにすべてを実現するのですから、大したものですね。
画家は貧乏だからダメと母に言われ、文学を志すロマン。
フランスに帰化し、空軍に入隊し、母の手紙に励まされ小説も書く。
シャルロット・ゲンズブールが渾身の演技。
ロマン・ガリの自伝小説「夜明けの約束」が原作ですが、感動のラストはガリの創作です。
【虚栄心と思い込みの強い母が、愛する息子へ送り続けた"生"のメッセージに涙する。】
冒頭、幼きロマン(実に愛らしい少年が演じている)のプレッシャーは半端ないなと思いながら鑑賞。
何しろ母ニーナを演じるのはシャルロット・ゲーンズブールである。(個人的な感想である。)
そして、彼女の息子を愛するが故の虚栄心と思い込みの数々。
・ロシア貴族の末裔
・将来はフランス大使
・画家は酒飲みだから駄目
(音楽家はロマンに才能なし)
・作家ならば、トルストイ、ヴィクトル・ユゴーが存命中に成功しているので良し!
ハッキリ言って、鬼母の元祖である。
だが、幼きロマンは懸命に頑張る。
ニーナに夫がいないことも彼らの多少歪な関係性を保った理由だろうな・・、と思いながら鑑賞。
が、ロマンの成長(ピエール・ニネ登場:心の中で拍手)と共に二人の関係性の見方が、徐々に変わってくる。
ロマンは母の望み通り、”一度だけ”短編小説が新聞に掲載され、鼻高々。ニーナもとても嬉しそう。(が、その後苦労するロマン・・)
二人は離れていても、お互いの”生”を強く望む様になっていく。
特にロマン。
第二次世界大戦下、翻弄される二人であるが、ニーナはロマンの昇進を信じてやまない。
- この辺りで第二次世界大戦下のユダヤ人の血を引く人々の微妙な立ち位置が描かれる。”サラの鍵”程ではないが・・ ここもさり気無いが良い。-
戦時下で戦友に呆れられながらもロマンが書いた小説「白い嘘」のイギリス出版が決定したのに、ニーナからの手紙はその事に触れられていない・・。
後半は"私の予想が外れる"事を念じながら鑑賞。
そして、涙した・・。
<男が闘う理由とは 名誉、女、そして”フランス”ではなく、愛する家族、父、母、そして大切な友人のためである、という当たり前の事を再確認した映画。個人的に良かった、とても。>
■蛇足
シャルロット・ゲーンズブール(私の中では、ゲンズブールではない・・)は一時期、私のミューズであった。CDも国内販売されたものは全て聴いている。(1986年”魅少女シャルロット”含む。家人の断捨離攻撃からも守っている。いつまでも、素敵な女優、ミュージシャンとして活躍して欲しい・・、と心から願う。
史実として見るなら
なかなか母と子の愛情が強くて驚いた。一つの史実として見てる分には面白かったが、現代に置き換えて考えてしまうと少し覚めてしまう部分も否めない。
ユダヤ人として差別を受けてきた母親だからこそロマンには厳しく接し育てた。現代社会に置き換えると行きすぎた愛や教育にも思える部分もあるが、ロマンが母を愛し続け、母の死を誰よりも苦しみ、何年も引きずるほどの関係だったのなら良かったのであろう。
良くも悪くも時代の差を感じる作品ではある。
感情移入せずに客観的に作品を見る分には時代やロマンという人物を感じ楽しめることができるのではないか。
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