「お手軽に楽しむ、クラシカルなスクリューボール・コメディ」英雄は嘘がお好き 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
お手軽に楽しむ、クラシカルなスクリューボール・コメディ
最近ではロマンティック・コメディはフランス映画に期待を抱いているところ。今回はちょっと変化球のロマンティック・コメディだったけれど、やっぱりフランスのロマコメは気分がいいなと思う。ジャン・デュジャルダンにメラニー・ロランという、日本でも名の知れたスター俳優の作品だというのもなんだか嬉しい。
内容としてはまさしく昔懐かしい古典的なスクリューボール・コメディと言った趣。意外やメラニー・ロランの喜劇演技がなかなか上手で良かったし、ジャン・デュジャルダンに真っ向から向き合って二人が喜劇演技をぶつけ合っているのもすごく良かった。そうやって男女がじゃれ合っていてこその、ロマンティック・コメディだしスクリューボール・コメディですもの。また妹のポリーヌがすごくいい味が出ていて、ノエミ・メルランのはっちゃけた演技で主演二人を超えてシーンスティーラーになっている側面さえあった。
とは言え、物語を真面目に見ると「嘘」の精度があまりにお粗末というか行き過ぎで、それに騙される者たちの姿の滑稽さを笑えるほどに面白いものでもなく、また個人的な印象としてデュジャルダン演じるヌヴィル大尉にチャームを感じ取れず(デュジャルダン自体は大好きだが)、彼が調子に乗って嘘を重ねていく様を楽しく見られる気持ちにはならなかったというところも否めなかった。
ロマンティック・コメディである以上はお決まりの結末も、なんだかしっくりくるような釈然としないような・・・。二人の関係性からしたらもっとイザコザしてもいいし、もっと激しく対立しあってもいいし、もっと巧みに「嘘」を利用した頭脳戦を繰り広げてもいいようなところ、案外甘ったるく片付いたな、という気もしないでもなかった。
でも肩の力を抜いて、気持ちのいい映画を見たいときにはちょうどいい映画だと思ったし、そういう映画を見たいと思って選んだ作品だったので、見終わった後の気分は爽やかだった。