「良かった。でも言っておかなきゃならない」映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて ミモザさんの映画レビュー(感想・評価)
良かった。でも言っておかなきゃならない
監督がtwitterで「今までの映画とちょっと違うかも」と言っているので、恐らく意図的にこのような映画になったんだと思います。
それを理解した上で、それでもちょっと…?と思う部分が大きかったので、まとめました。
疑問1 子供を飽きさせない映画か?
大人でも楽しめる、という触れ込みで元ネタ探しや考察が行われているようですが、そもそも子供はどうでしょうか。他のサイトでは子供が劇場を走り回っててちゃんと見れなかった、なんてコメントもありました。
とにかくバトル、ダンス、旅行以外のシーンが長く、地味です。子供は5分地味だと座ってられなくなる~なんて言われる生き物です。大人だけが楽しめる映画になってませんか?
疑問2 シナリオは推敲されていたか?
ひかるとララ、2人にキャラを絞り、ユーマと親友のような、親子のような関係を描いたストーリーはとても美しいと思います。しかし、それを短い尺に納めようとしたせいか、ストーリーの根拠がことごとく破綻しています。
つじつまが合わないとかいう細かい話ではありません。ストーリーに関わる動機、背景、感情などが、びっくりするほど「口で説明」されているのです。しかも「たぶん○○じゃない?」という感じの憶測で喋ったものが、何の疑問もなく受け入れられハイその通りでした、と次の話に繋がっていく。これでは映画を観る子供たちは物語に対し疑問を持つことを許されず、思考停止に陥ってしまうのではないですか?
疑問3 多様性は本当に描かれていたか?
本アニメはTVシリーズから「多様性」を重視していました。この映画はどうでしょうか。
ユーマを狙う敵は「捕まえるのも守るのも、結局は人のエゴだ」とかなり厳しい発言をします。しかし物語は最後までこの発言のアンサーを出せません。
ユーマに対して「私のせいでこうなった」「いや違う、こうだ」「助けに行こう」「思い出させてあげよう」と、ユーマの声に耳を傾けることなく、人側のエゴで行動し続けます。結局それでユーマは救われたから良かったものの、もしユーマが誰にも会いたくないと思っていたら?宇宙に帰りたくない気持ちがあったとしたら?恐ろしい星だろうが構わず巨大な星になる事が一番大事なんだとしたら?
確かにこの映画は、今までのプリキュア映画にないチャレンジをしています。映像や歌の力を信じ、特殊な構成で物語に緩急がつけられ、そこに説明は無くとも伝わる…そんな映画を目指したのではと思います。実際にそれらはとても素晴らしく、胸を打ちました。
しかし、それはあくまで大人の目線。さらに嫌みな言い方をすれば「口で言って分かってくれる良い子だけを欲しがる、悪い大人の目線」によって都合良く描かれているような気がします。そんな風に感じてしまうのは、私だけでしょうか。
前作のプリキュアでも少し似たような話題が出ていましたが「大人の主張をプリキュアに代弁させる」ような作品には、なるべくならないようにして欲しいです。むしろ大人が忘れてしまった当たり前の感情にこそ、これから子供が学び、大人も思い出すべき大切なものがあると思うのです。