「「ゲルニカ」を知れば邦題がそれほど間違ってないことが分かる筈。」ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ まこさぽチャンネル(さぽしゃ)さんの映画レビュー(感想・評価)
「ゲルニカ」を知れば邦題がそれほど間違ってないことが分かる筈。
この邦題で「ヒトラーとピカソが戦う(バトルする)」と思って映画館に行った方がネット上でちらほら見えて、日本の美術教育を根底から見直す必要があるんじゃないかと心配しています(笑)
絵画の作者名すら殆ど出てこないので、え?誰の作品?どういう作品?と絵画に捕らわれることなく、絵画をヒトラー(ナチ)に略奪されたユダヤ家族の、略奪されたのは「絵画だけではない」物語に注力して観て頂ければいいかなと思います。
※「黄金のアデーレ名画の帰還」を補足として観るといいと思います。この作品も、絵画の歴史と、絵画を奪われた家族の歴史とを重ね合わせて、ユダヤ人としてのアイデンティティの喪失、そしてそれを取り戻す。等が、テーマだったと思います。
また邦題ではVSとなっていますが、原題を英訳すると「against」=背くという意味となります。まぁ、VSに近い意味でもあります。
ピカソが思想的にヒトラー(ナチ)に“背いて”、「ゲルニカ」を描いたことに由来していると思われます。
あの有名な名作「ゲルニカ」が描かれた背景を知れば、ピカソが心の中で確かにヒトラー(ナチ)と戦っていたことは明らかです。
本作でたいして説明がないのは、「ゲルニカ」知らない人はいないでしょ?ということだと思います。
そういったことを教えてこなかった、日本の美術教育の低さが本作の評価の低さに繋がっていると思われます。
ピカソだけではなく、当時は世界中に、日本にだって戦争画(プロパガンダ画)を拒否して、反戦画家と言われ罰せられたり、画壇を追われた画家が多くいました。
本作では画家とは時代に鋭い目を向ける者である。という、ピカソの言葉を借りて、そんな多くの「画家の矜持」を描いています。
画家を夢見て、そして叶わなかったヒトラーの絵画への歪んだ愛情やコンプレックスが、絵画略奪に走らせた原因の一つではなかったかとも言われています。が、真実はいかに。