「演出は素晴らしい、神秘性、構成は物足りず」天気の子 虹孔雀さんの映画レビュー(感想・評価)
演出は素晴らしい、神秘性、構成は物足りず
映像の美しさや、音楽とともに感情を高めていく描き方、演出は本当に素晴らしい仕上がりになっていたと感じました。
雨上がりの屋上からながめる美しき夕焼け、心躍る音楽とともに晴れゆく空、これらは「君の名は」に劣らず、臨場感あふれる新海ワールド全開だったなと思います。
けれども、構成とか、神秘的な描き方(「君の名は」と比べると)に関しては、物足りないなと思いました。
以下は、ただのヘイトというかは、次もっと改善してほしいなっていう善良なクレームだと捉えていただければと思います。
1.風俗街とか、ラブホ、ピストルを使う描写が本当に必要なのか?
現実的すぎて、生々しい。オリンピックとかもあるし、東京をあまり低俗なイメージにして欲しくなかった。陽菜が、お金のために、お店に入ろうかなって思って迷った描写も。もう少し、純朴で、透明感のあるイメージを保ってほしかった。そうであってこその、巫女的女性のイメージをぐっと出せるし、神秘的な女性などを描けるのではないかなと思いました。また、ラブホに中学生以下の子どもたちが泊まっているシーンとかは、倫理観がずれているように思う。ピストルの使用も、2度あったが、特に2度目は故意に威嚇で振りかざしている。実現したいことを阻むなら、ピストルを使ってでも良いのだろうか。
2.本当にあのラストでいいのか?
陽菜さんに会いたい、ただそれだけで、世界に対しては責任を感じず突っ走ることは、純粋な愛の行為だと言い切って良いのだろうか。「君の名は」で多くの共感を得たところは、愛ゆえに「この世界を守りたい」と思って、勇気ある行動を取って、世界の運命を変えた、というところではないだろうか。「天気の子」は真逆で、この世界の「空気」に媚びないという爽快感はあるが、悪く言えば自己中的な考え方がどうしても共感しきれない。
新海ワールドの真骨頂は、「会えそうで会えない。けれども、どんなに遠くに離れても。愛の力は必ず時空を超えて運命的に引き合う。」という構成が、観る者の心を共感させ、憧れさせ、(「君の名は」では)最後に神仕組みのようなめぐり合わせが、さらに感動を高めていく。そうしたところが本質にあるのではないかと思います。
今回も、結論だって、やりようによっては、陽菜も世界も守るという選択もできたと思います。あまりにも簡単にあっさりと結論が出てしまい、「えっこれで終わっちゃう?」という良い意味でのハラハラが足りなかったところもあり、展開が直線的すぎたかもしれません。
あと、我々にとってあまりにも現実味のあるシーンが多すぎたため、映画の世界と現実をつなぎ合わせるパイプが強すぎたことが、リアリティを追求しすぎて、神秘性を損なわせてしまったと思いました。
より素晴らしい作品が観れたのではないかという、新海誠監督への期待値の高さが、普通なら高評価のところを、低めに評価してしまった原因かもしれないですが、とりあえず以上です。