「素晴らしき水の表現。」天気の子 はてんこさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしき水の表現。
新海誠作品の良さはなんと言っても背景画の美しさ。今回は水の表現が光った。
「言の葉の庭」あたりから水面や雨などの表現に比類なきモノを感じさせた新海誠作品が、とうとう雨を主題にした映画を作ったという感じ。
君の名はの彗星の描写で、CG技術をうまく使うなぁと思っていたが、今作ではそのCG技術が鼻に付くシーンがいくつかあった。
花火を空撮したような映像や、東京タワーを空撮したような映像がそれだ。引きのCG絵はアニメーションだとどうしても浮く。背景描写が緻密で美しいからこそなお、その違和感が引き立ってしまっていた。
また、新海誠作品では心の声的なナレーションがかなり入る。ここに好き嫌い別れる理由があると思う。
ジブリやスタジオ地図作品は、大事な場面でも、キャラクターが何も言わないでただ佇んでいたり、無言で何かしているというシーンが数多くあるが、新海誠作品ではあらゆるナレーションが入る。
(時をかける少女のラストシーン付近、まことが息を切らして走っている場面と、天気の子の、帆高が線路を走って行くシーンを見比べると面白い)
これにより、新海誠作品ではメインのキャラクターがなんとなく稚拙に写る(本音ダダ漏れだから)。しかし、それが青春時代の若さと相まって雰囲気を出しているのも事実だ。そこに加えてファンタジー要素が入るし、別空間に飛んだり時間をテーマにした要素が絡んでくるので、なんとなく、辻褄の合わない"夢心地"な雰囲気が作品全体に横たわっている。
"君の名は。"では、作品の主題とその"夢心地"な雰囲気がものすごくマッチしていたというのが多くの人の心を掴んだ要因の一つだと考える。
その点で天気の子は、警察、拳銃、売春、生活保護、親権問題など、夢心地さとは離れた要素が散りばめられていたので、君の名はほどの没入感はなかった。
ただ、話の流れは天気の子の方が理解しやすいし、小栗旬が声優を務めた須賀圭介の葛藤とキャラ設定は実に魅力的だった。
楽曲、グランドエスケープが流れるシーンはシンプルに美しく、興奮した。
そして何より、前述した水の表現が前面に出てきた事により映像美の部分でも類を見ないほど素晴らしいものとなっていた。
総じて、君の名はより完成度は高い。
が、新海誠作品の雰囲気に合っていたのは君の名はの方だった。