「大事なことがなんなのか」天気の子 画太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
大事なことがなんなのか
絵がとても綺麗です。
写実的に新宿などの街を描いています。
絵だけでなく、音も。
繊細に描くことによって、リアルな2次元の世界に観客を引き込み、いつのまにか空想の世界への誘われていきます。
空、人の目線、地面など、様々な高さで風景を描く工夫もされています。
わずかにエロチシズムな描写が、大人の心をくすぐります。
大人になる一歩手前の少年と少女の葛藤が、銃や暴力という、着火剤で炙られていきます。
と書いてみたけど、やっぱり違うか。
何かが足りないというのか、過剰というのか。
面白いとか、感動するとか、美しいと思うとか、人の感情の流れを予想しながら組んだパズルのような映画は多いけど、この映画は、その一種で、観客が「騙されてもいいから流されよう」と思えるほどの自然さがない映画です。
新海監督は、そういうあざとい計算をして映画を作る人ではないと思うので、「君の名は」で金を設けたなんちゃらプロデューサーみたいな人が仕込んだのでしょう。
プロダクトプレイスメントも、忠実すぎる街の描写も、見ていてくたびれます。
人の想像力を信じていない映画ですね。
どうだ、どうだ、美しいだろう、絵が綺麗だろうと。
人の脳は、描き切れていない部分を想像して埋めながら、その世界へ気持ちを送り込んでいきながら、没入するのではないでしょうか。
最後に、どんなに長い期間、東京に雨が降ろうと、超集中豪雨かダムの決壊でもしない限り、下町があそこまで水没することはないでしょう。
愛と引き換えの代償?と言いたいのかな。
写実的に描きすぎた結果、物理的な矛盾をさらけ出して終わってしまいました。
もっと空想で包めばよかったのに、残念です。