「新海誠作品にはエモーションがない……そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。」天気の子 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
新海誠作品にはエモーションがない……そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。
家出少年の帆高と、天気を晴れさせることができる少女・陽菜は、その能力を使い商売を始めるが、次第に陽菜の体に異変が起き始める…という、セカイ系ボーイ・ミーツ・ガール・アニメーション。
監督/原作/脚本/絵コンテ/イメージボード/編集は、『言の葉の庭』『君の名は。』の新海誠。
「100%の晴れ女」こと天野陽菜の声を演じたのは、ドラマ『3年A組』や『東京喰種【S】』の森七菜。
帆高が転がり込んだ編集プロダクションで働くお姉さん、須賀夏美の声を演じたのは、『今夜、ロマンス劇場で』『新聞記者』の本田翼。
編集プロダクションの経営者、須賀圭介の声を演じたのは『銀魂』シリーズや『君の膵臓をたべたい』の小栗旬。
帆高の事を探す刑事、高井高司を演じるのは『進撃の巨人』シリーズや『僕のヒーローアカデミア』シリーズの梶裕貴。
陽菜の弟、凪の彼女であるカナの声を演じるのは『言の葉の庭』『君の名は。』の花澤香菜。
また新海誠監督作品『君の名は。』から、メインキャラクターがゲスト出演している。
立花瀧…神木隆之介。
宮水三葉…上白石萌音。
勅使河原克彦…成田凌。
主題歌を歌うのは『悪の教典』『男子高校生の日常』(いずれも出演)の、女優としても活躍する三浦透子。
第43回 日本アカデミー賞において、最優秀アニメーション作品賞を受賞!
第11回 TAMA映画賞において、特別賞を受賞!
新海作品は『言の葉の庭』までは鑑賞していたんですが、どの作品も自分には何が面白いのか分からず、結局『君の名は。』も未だに未鑑賞…💦
ただ、『君の名は。』の大成功により一躍大物監督の仲間入りをした新海作品を無視するのは映画ファンとしてはご法度だろうと思い、今回鑑賞させていただきました。
ネットの反応も賛否両論といった具合だったので、ほとんど期待せずに映画館へ。
外には、この季節特有の湿気が多く混じった生ぬるい雨が降っていました。
映画館の客層は男女比7:3くらいで男性客が多かったかなといった感じです。
遅い時間の上映だったからだと思いますが、親子連れはほとんどおらず、カップル客や夫婦連れのお客さんが多いかなぁといった感じ。
男同士や仕事帰りのサラリーマンのお客さんも目立ちましたね。年齢層も意外に高いかなといった具合。
流石の新海作品、映画館はほぼ満員でした。
作品の感想ですが、結論から言えば、良かった!いや、めちゃくちゃ良かった!
新海作品に漂うジメジメした男女関係が苦手だったんですが、今回はそんなことはなく、爽やかな作風。それでいて、新海誠監督の持つビターな世界観はそのままで、非常にエンタメ性と作家性のバランスが良かった!
以前までの新海誠ならバッドエンドで終わっていただろうし、クライマックスにわざとらしい感動ポイントを作っていたと思うのですが、今回はなんともサッパリとしたエンディングで、感動シーンも押し付けがましくない。
完全なハッピーエンドではなく、少し暗い影を落として終わる感じが個人的な好みにジャストフィット!
主人公の若さゆえの暴走は流石にやりすぎだろうとは思いましたが…。「GTA」かよっ😅
でもあのラストの疾走シーンでは、観客も「走れ、少年!」と思ったはず。宮崎駿作品のキャラクターの様な疾走ではなく、頼りないヘロヘロダッシュだったからこそ、あのシーンは大感動!
作風は相変わらずポエミーで、少し座りが悪くなる所もありましたが、後半は作品にのめり込めたのでそれほど気にならなかったです。
「家出少年はライ麦畑を読みがち」「男女の空中落下シーンは手をつないで回転しがち」というお約束もしっかり踏襲🤣
監督のジブリ愛と村上春樹愛がなんとなく垣間見える。
この監督の作品は本当に作画が素晴らしい。
背景の美しさ、東京の街並みのリアルさ、凄いですよね。
キャラクターの動きも生き生きとしていて、かつ繊細。そして雨や嵐の圧倒的なド迫力!
どんだけ手間が掛かってるんだろう…🙄
音響も迫力があって凄い良かったです。IMAXで鑑賞したんですが、これが大正解。映画の中に入り込んだ様な感覚が味わえます。
声優陣も良かった!上映前は本田翼の演技に批判が集まっていた様ですが、キャラクターに合っていてとても上手かったです。
個人的には野沢雅子さんと池田昌子さんの『銀河鉄道999』コンビが声優として参加されていたことに感動しました。このキャスティングは意識的でしょう!
気になる点は警察官の描き方かなぁ。
若者の衝動と公権力の対立は盛り上がるシチュエーションといえばそうなんですが、ちょっとステレオタイプすぎるかと。別に悪い人じゃないのに悪く見えてしまう描き方はうーむ、といった感じ。
あと前半が退屈。テンポが悪い。花火のシーンから後ろはテンポ感いいんですけど、それ以前はなんかモタモタしていて、もっと早く物語進めろよと思わなくもないかなっと。
それと、RADの曲を入れ過ぎじゃないですかね…。
作中あまりに何度も流れるので、何だかMVみたいに見えるところも正直あった。
『君の名は。』が同じ戦法で成功したので、今回もそれに倣ったのだと思いますが、やはりここぞ!という場面でドーン!と流すのが映画的だと思います。
新海誠監督の実力は確かなものなのですから、もうRADに頼らなくても大丈夫でしょ。
色々書きましたが、とにかく本作は素晴らしい!
この作品は雨の多いこの季節に、大音量の映画館で観ることで面白さが倍増するタイプの映画です。絶対に映画館で観なければいけません。
私は『言の葉の庭』の頃までの新海誠監督しか知らなかったので、本作を観て彼がこれほどまでに成長していることに驚きました。本当に素晴らしい監督になっている!
この監督の作品を映画館で、リアルタイムで観ることができるのは非常に幸せなことなのかもしれません。この機会に『君の名は。』も是非鑑賞したいと思います😆
映画館を出ると、これまで降っていた雨が上がっていました。映画と現実がリンクしているようなこの感じ。うーん、たまらん!