「雨や空が美しい、監督集大成作品なのでは。」天気の子 ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
雨や空が美しい、監督集大成作品なのでは。
けぶるような雨、落ちる水滴、雲間から射す光、空の魚、空の上の世界。
ただただ美しく、雨の空気の匂いを感じる錯覚すら覚える映像に感動した。
これ観るだけでも劇場行く価値はあると思う。
ストーリーは、居場所を持たずに故郷を飛び出した少年・帆高が、天候を操る力を持った少女・陽菜に恋をして、世界の異常気象を止めるために自己犠牲を払おうとする彼女を取り戻す(世界秩序よりも大切な女の子を選ぶ)物語。
フォーマットはいわゆる新海誠監督が初期に制作していた「セカイ系」作品にあたると思うんだけど、でも以前は2人だけの世界(僕と彼女)で閉じがちだった物語を他者を巻き込むようなひらけたものにしていて、ある意味進化したセカイ系の物語だったような気がしている。
逃避行には2人にとって大切な弟・凪がいて(この凪くんが聡明なナチュラルイケメン!)、帆高に関わった須賀さんや夏美さんも巻き込んでの物語になっている。
須賀さんがもう一人の帆高として物語を背負っていることがちゃんと描かれているのも良かった。
そしてそんな周囲の人々は帆高が「世界の秩序」よりも「大切な人」を選ぶよう背中を押してくれるのだ。
初期の新海誠監督が、「大切な人」に手を伸ばしきれずに失った喪失感を抱えて生きる男の子たちを描いていたところを(それはそれで作品として私は好きだが)、本作では周囲の人に助けられながら手を伸ばして「大切な人」を選び取っている。
そういう意味でアニメーション制作を続けた監督の新しいアンサーであり、集大成の一つでもあるのかなあと感じた。オタク層のみでなく大衆向けとして完成した映画だった。
(私個人は新海監督の作品の喪失感や痛み中毒者だったのでそこは少しだけ物足りなくもあるけども…。笑)
君の名は。メンバーが出てきたのも、サービス精神たっぷりで嬉しい。