「アニメの子」天気の子 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アニメの子
一回きりのスーパーメガヒットだったのか、ポスト宮崎になれるか、真価が問われる新海誠監督最新作。
一般観客やファンや業界でも今年の待望期待作の一本。ネタバレは絶対NG。
実は、あまりあらすじを把握しないまま鑑賞。予告編の感じだと、天気を題材にしたボーイ・ミーツ・ガール×ファンタジーみたいな…?
差し支え無い程度にあらすじに触れると…
雨が降り続ける東京。
離島から家出して来た少年・帆高は、ひょんな事からオカルト雑誌のバイトを始める。今特集してるのは、都市伝説的な“100%の晴れ女”。
ある時帆高は、一人の少女・陽菜と出会う。彼女こそ、祈るだけで天気を晴れにする事が出来る不思議な能力を持つ噂の“晴れ女”だった…!
あのスーパーメガヒットの後の作品なので、色々感想や意見が分かれるだろう。すでに賛否両論状態。
自分としては、あのスーパーメガヒット作の前から見てきた新海ワールドに、今回も魅了。
本作は本作で、また新たな魅力を持った新海ワールドだったと思う。
これぞ夏アニメ!…とでも言うべき、ひと夏の青春。
少年少女の淡く純粋な恋。
超常現象のような不思議。
見た事も無い世界、経験。
出会い、成長、苦悩、葛藤…。
自分は今、何の為にがむしゃらになれるのか。
新海監督の代名詞とも言える圧倒的な映像美と再びタッグを組んだ映像にマッチのRADWIMPSの音楽に彩られ、ユーモアを交えつつ、詩的な感性と繊細な描写。
クライマックスに進むにつれ、予想だにしなかったスケールと世界観と展開に、気が付けばいつしか引き込まれていた。
それにしても、不思議な不思議な物語。
下手すりゃキワモノ的な題材を、よくぞ魅力的なボーイ・ミーツ・ガールに昇華したと思う。
折しも記録的な日照不足の今年。是非とも陽菜に祈って貰いたいと、ついつい。
本当に天気というのは、人の気持ちとリンク。
晴れなら心が気持ち良く、雨なら心が冴えない。
あくまで天気はその言葉通り天の気まぐれなのに、どうしてこんなにも人の気持ちを動かすのだろう。
そんな天気と心が繋がっているように、天気を変える事が出来る陽菜。
何故、そんな力が…?
勿論これは言えないが、その不思議な能力には日本独自の風習が絡むのが興味深い。(ここら辺、あのスーパーメガヒット作と同じ)
そして、その不思議な力故の悲しき運命…。
世界を変えた。偉大な功績を残したとかでなく、その言葉通りの意味で。
そんな事、誰も信じないだろう。
でも、そんな信じられない事が、不思議な事が、この世界に。我々がただ知らないだけで…。
それを突き動かしているのは、がむしゃらでピュアな若者たち。
主人公の少年少女たちの言動は、少々過剰でもある。たまたま拾った○を保持し、それが原因で警察にって…。
不思議で、狂ったこの世界。
そんな世界で、ただひたすら追い求める。
この気持ちに。この想いに。もう一度、逢いたくて…。
実際の東京の街並みを丁寧に再現した圧巻の映像。雨の描写のクオリティーは『言の葉の庭』でも実証済み。
余談だが、我が町でもずっと雨続き。が、劇場を出た時降っていた雨が少し止み、雲の隙間から晴れの日射しが差し、それはまるで劇中そのもので、何か不思議な感じだった。(←これ、本当です!)
RADWIMPSの音楽と歌。おそらくメイン主題歌の「愛にできることはまだあるかい」が話題になるだろうが、個人的にはfeat.三浦透子の「グランドエスケープ」がお気に入り。
新海監督のもう一つの真骨頂とも言える、魅力的な女性キャラは今作でも。ヒロイン・陽菜が可愛い。
謎の公開前から酷評相次いだ本田翼の声だが、自由奔放な性格の夏美にそう酷くはなかったと思う。一番のファンタジーは、バイト先にこんなセクシー美人の先輩が居る事!
また、新海監督の過去作のキャラがカメオ出演している事も要チェック!
客足は早速上々も、これから沢山の意見が出るだろう。
でも一つ言えるのは、
一定以上のハイレベル、ハイクオリティー、魅力…。
アニメーションならではの表現、イマジネーション…。
その手腕は随一。
新海監督は当代きっての、“アニメの子”だ。
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最後にこの場を借りて、スタジオは違うが同じアニメ繋がりで、今回の京都アニメーション放火殺人事件について。
自分も京アニは好きな作品が多いので、衝撃でショックだった。
こんな惨事が起こった事、才能あるスタッフたちが大勢犠牲になった事…。
凶行に至った男の動機はまだ明かされていないが、身柄を拘束される時に発した「パクりやがって!」という言葉。
こんな事言うのは少々気が引けるが、こういう事って度々ある。ハリウッドでは、大ヒット作が生まれると必ず、パクりだ!盗作だ!…と言われる。
でもそれって、何の信憑性も無い。単なる思い込み、逆恨みでしかない。
京アニ作品に限った事じゃないが、ジブリや実写の人気作に対して、世の中辛辣な意見が多い。『天気の子』もこれから相当比較されたり、真っ向否定意見も出るだろう。
映画は確かに人それぞれの意見なのだが…
やれパクりだの、やれ期待外れだの、やれ某作品と比べると…だの、そんな意見が時に多く感じる。
何と視野の狭い見方だろう。もう一度言う。何と視野の狭い見方だろう。
そんなひねくれた見方が度を越した。
今やアニメは、世界的な日本文化の一つ。
やっとここまで来た。なのに…。
かつて宮崎勤元死刑囚がアニメヲタクと報じられ、アニメヲタク=アブナイ奴と世間に誤って認識されてしまった。
私が心配するのは、今回の事件でまたそういった偏見が広がったりしないだろうか。
すでにネット上では、哀悼の意見がほとんどの傍ら、アニメスタジオだからと言って誹謗中傷してるクソバカどもも居る。
では、何だったら心底悼んでくれるというのだ? スポーツか? 音楽か?
それらとアニメと何が違うと言うのだ? 人の命に変わりは無い。
そもそもはこの許し難い残虐な凶行を行った犯人。テメエのせいで!
自身も火傷を負ったらしいが、そんなもんじゃ生温い。間違いなく死刑になるだろうが、厳罰に処すべき。
無情に不条理に命を奪われた犠牲者の方々の為にも…。
自分も一、アニメが好きな者として。