「【”無関心社会。”今作は住んでいるマンションの敷地で起きた殺人事件を、見て見ぬふりをした人達に襲い掛かる尋常でない展開に引き込まれるシニカルなサスペンスホラーである。】」目撃者 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”無関心社会。”今作は住んでいるマンションの敷地で起きた殺人事件を、見て見ぬふりをした人達に襲い掛かる尋常でない展開に引き込まれるシニカルなサスペンスホラーである。】
■深夜二時にマンション購入祝いで泥酔状態で帰宅した会社員のサンフン(イ・ソンミン)は、若き女の微かな悲鳴を耳にする。
ベランダに出たサンフンは、女が男に殴られているところを目撃する。次の瞬間、サイコキラー(クァク・シヤン)はサンフンの部屋の明かりに気づくが、サンフンは咄嗟に明かりを消すのである。
翌朝、チャン刑事(キム・サンホ)らは目撃情報の聞き取りを始めるが、有力な証言は出ない。だが、サンフン同様に犯行を目撃していた主婦がサイコキラーに、血だらけになり引きずられて行く姿をサンフンが観た事から、彼は家族を守るために、一層警察への目撃証言を拒むのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・サンフンが引っ越したマンション住民が、マンションの価値が下がる事を恐れ、警察への証言・協力をしない会を結成し、その会長の女が精薄の青年に命じていたビラ剥がしなどの行為が恐ろしい。正に無関心社会である。
・帽子を被ったサイコキラーの凶器がハンマーであるという点も、恐ろしい。
・サンフンが最初は知らぬ存ぜぬの姿勢を崩さなかったのが、サイコキラーに殺された主婦の逆上した夫が、彼を車で追い詰める所からの、サイコキラーがサンフンの家に乗り込んで来るシーンの緊迫感は尋常ではない。
■無関心社会をテーマにした映画としては、近年の「関心領域」が特に秀逸であるが、今作もナカナカである。
マンションの住民達が気にしていた、無理にマンション建設を行ったがために起きた山崩れにより、サンフンとサイコキラーが呑み込まれるシーン。サンフンは辛うじて生き残るが、サイコキラーは致命傷を負い、サンフンが殴り掛かった時に、土の中から多数の死骸が出て来るシーンも、シニカルである。
マンション住民が如何に、サンフンが越してくる前から、サイコキラーの行為に無関心であったかが暗喩されるからである。
そして、このマンションの価値は地に落ちた事も暗喩しているのである。
<ラストシーンもシニカルである。夜、サンフンはマンションに向かって”助けてくれ!”と何度も叫ぶが、誰も窓を開けないのである。
驚愕するサンフンの表情。
今作は、殺人現場を見ても、見て見ぬふりをしていた人たちに襲い掛かる尋常でないシニカルな恐ろしい展開に引き込まれるサスペンスなのである。>
