108時間のレビュー・感想・評価
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不眠は病気…
敢えてその先を覗く為、断眠と言う異常な手段で演劇の新境地を目指すと言う。
この時点で色んなものが正気ではない。
主人公ビアンカの父親など初っぱなから妄想性の人格障害で自傷他害の恐れがある。
ビアンカもすぐに物を分解したり、父親と同じく精神病の素養があると思ってしまう。
さらに不眠を勧めるアルマなどは新興宗教レベルで狂っている。
廃病院(精神科)使うのは良いが、なんと言うか汚い!(精神科はその性質上傷みや汚れは避けられない)
更にその観客席も異様だ。
壁穴から覗くように観るとか…アングラ臭が酷い。
不眠でトランス状態を目指すのは結構だが、不眠不休では脳の働きが低下して、台詞も演技も演出も現実的ではない。
この点で私自身の興味は作品がどんな幻覚妄想の世界を見せられるか?に移行し、ホラーでもなくミステリーでもない。
精神病は惹かれ合うのだろうか?と思うほどに劇の参加者は皆一様に異常な雰囲気を持ち合わせ、
統合失調症の妄想に囚われた状態に近付く。
こうなってくると、映像として見せられているものが何処まで妄想で何処までが現実か?解り難い
108時間の向こう側
108時間を起き続ける。その向こう側に辿り着ける選ばれし者が見たモノとは·····。
ホラーといった視点でこの映画を見始めたが、女優とは何か、舞台演出とは何かを考えながらいくつもの疑問を自己の解釈で楽しむことができた。人間の本質から生まれる表現を、観客たちは壁の穴から演者に気付かれないように観劇するというエロティックさ。非日常的快楽故の至極演出は、とても尋常ではない。優雅なBGMは緩急を際立たせ、迫り来るホラー映画とは別物。
ジャンルごった煮ヒスパニック映画
ホラー、スリラー、サイコ、サスペンスといった多要素を放り込んだダイバーシティ作品・・・というのも変かな?自分の観方は、充分ホラー的要素、いわゆる“ビックリさせる系”の心臓に悪い内容の王道を踏んでいたと印象を持った。しっかりとBGMで不穏感を煽り、きちんと小道具で隠れている場所へ誘導させ、そしてそこを開けると結局何もない、と安堵と同時に、カメラフレーム外からの脅かしという、黄金パターンを繰り返すシークエンスは、好事家には涎モノのパターンだと思う。それに丁寧に伏線と回収、フリとオチを仕上げている点、不気味さを熟知してるであろう制作陣のチョイスする小道具の洗練さは、今作品を非常に真面目に制作した意志を強く感じさせられた。鑑賞後のネットでのネタ探しで、映画“インセプション”の近似点を挙げていたサイトがあったが、確かに寝ている夢と寝ない事での幻想は、もしかしたら人間の脳の働きとして同じなのかもしれないと医者ではないから安易に言えないが、麻薬物質が脳を支配するイメージとして同一視してしまっているのは否めない。
4日と半日寝ないなんてのは自分の今までの人生の中では決して体験したことがない、否、してみたいとも思わないが、本能の行為で食べること、生殖行為をすることに比べると比較的文字通り五里霧中のところが大きい行為である。しかも断食ならぬ断眠という、おいそれと実験できない或る意味神秘的な匂いも手伝って興味深いキャッチーさがある。
ストーリー内容も日本人に親和性が高いんじゃないかと思う。演劇の世界という舞台設定も映画“Wの悲劇”を思い出すし、展開が進んでいく中で、メタ構造としての構成がラスト前で行なわれる芝居(急に主人公の髪型がショートになっているカット替に違和感を感じたのはそれが原因)、そして観客だけでなく、演出家さえも騙した演技力を裏付ける主人公の“クセ”を回収する脚本と演出。緻密さをひしひしと感じさせる。主人公の父親がどこかで絡んでくるのかと思ったがそこは無かったのが拍子抜けであったが、何となく、続編を感じさせるようなラストで括る辺りはニクい演出であると好意的に感じた。「憑依」させる仕業も、なんとなく日本の“きつね憑き”とイコールだし、ジャパニーズホラーを踏襲したようなイメージを強く感じたのは自分だけだろうか。
主人公以前に同体験を施された元女優の行動や、パン窯の使い方、特に、4.5日も寝ていない状態の顔つきや身体の疲労感の伝達不足等、幾つかもう一捻り工夫を要望したいが、とにかく丁寧な仕事に敬意を贈りたい作品であった。
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