「時制を前後させながら近づいては離れる二人に寄り添う静かで美しい物語」リヴァプール、最後の恋 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
時制を前後させながら近づいては離れる二人に寄り添う静かで美しい物語
1979年のある日、リヴァプールの売れない舞台俳優ピーターの隣に妙齢の女性が引っ越してくる。玄関を開けっ放しで発声練習をする彼女は50年代のハリウッドで名声を轟かせた大女優グロリア・グレアム。ちょっとしたきっかけで急接近した二人だったが、奔放な人生を歩んできたグロリアと駆け出しの役者に過ぎないピーターに様々な試練が降りかかる。
実録ドラマですが1979年から1981年の間で時制がスタイリッシュに目まぐるしく前後する構成。部屋の壁紙がそれぞれの時間を表しているのを観逃すとちょっと戸惑います。また同じ場面を違う視点からなぞることで複雑な心情を立体的に見せる工夫も効果的で、決して声を荒げることなく静かに運命を受け止める二人の姿が眩しくてさめざめと泣けました。
主演のアネット・ベニングがもうとんでもなくキュート。初めて彼女を観たのは『心の旅』だったと思うのでほぼ30年前ずっと可愛い。というか当然生まれた時から可愛いでしょうから60年可愛いままってもう超人です。元々物凄い演技派ですが本作では全身からオーラを発散する成熟期からどんどん衰弱していく様を繊細に表現、さらに一段高みに上がった感あり。時代考証も繊細で、二人が言及する映画の話や一緒に観に行く映画にニヤリとさせられます。サントラは当時のヒットソングを敢えて外したと思しきマニアックな選曲。特にホセ・フェリシアーノ版の『夢のカリフォルニア』は静かなドラマにぴったりハマっていて印象的でした。
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