「とても美しい「想い出」のラブストーリー」リヴァプール、最後の恋 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
とても美しい「想い出」のラブストーリー
何を以て「恋」と呼んで、何を以て「愛」とするかは私にはまったく分からないけれど、とにかくこの映画は美しいラブストーリーだった。往年のハリウッド女優と、駆け出しの若手俳優の、親子ほど年の離れた男女の絆。恋かもしれないし、愛かもしれないし、でも彼らの関係を恋や愛とは呼ばない人もいるかもしれない。でも、確かに存在した二人の間の絆。命の先が見えた時に、走り出してでも駆け付けたい相手がピーターだったというだけで、もうそれだけでいいではないか。それはもう確かに愛でしょう。
ピーター・ターナー自身の回顧録に基づいた作品であることから、いくらかの美化が入り込んでいるのは否めないとしても、それでも映画としてとても美しいラブストーリーだと思いましたよ。思い出は大抵美化されて残るものですし。綺麗に磨いて美化しておきたくなるほどの思い出なら尚更。
この映画はきっと「想い出」の映画なのだろうと思う。現在進行形の恋愛ではなく、想い出の中の恋愛。だから、窓の外の景色はまるで夢のように美しくて現実味がないし、物語もどこか嘘くさいほどに美しい。回想シーンが多いのも、この恋愛が「想い出」の物語だからなのではないかと思う。人生において誰しも一度くらいはドラマティックな「生涯の恋」をする。他人から見たら大したことない恋愛でも、自分にとっての「運命の恋」。この映画はピーターにとっての「運命の恋」であり、想い出によってブラッシュアップされて美しくなった一種のファンタジーなのかもしれないとも思う。でもそれもいいと思う。―あれは夢のような恋だった― その恋の話に2時間ほど耳を傾けるのも悪くないではないか。
眩いほど輝く姿から病床でやつれていくまでの女優グロリア・グレアムを演じたアネット・ベニングの熱演もさることながら、個人的にはピーター・ターナーを演じたジェイミー・ベルに大いに感動した。実に器の大きな演技。ベニングが自分の目の前で大芝居を打っているのを全て包容する懐の大きさと言ったら!ベニングも年齢や世代を忘れてベルの前で安心して演技が出来たのではないか?と思うほど。「リトル・ダンサー」のころを知る身としてはもうただただ感動でした。いや、彼が只者ではないことは分かっていましたとも。もちろん。
年齢も身分も違う二人が、最初はただ不釣り合いな男女にしか見えなかったのが、物語が進めば進むほどにキュートでお似合いの男女に見えてくる不思議。あぁ恋の魔法ってやつ。映画の魔法ってやつ。
ラストシーンの後、グロリアが実際にオスカーを受賞した時のシーンが挿入されてすべてが腑に落ちる。彼女はとてもエキセントリックでとてもチャーミングな女性だった。史上最短の授賞スピーチが、彼女の人となりのすべてを表すかのよう。あのスピーチを見た後で「あぁやっぱりあれは恋だったし、愛だったに違いない」と、ピーターとの関係になぜか納得してしまうのだった。