運び屋のレビュー・感想・評価
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ベテランによる手慣れた話芸
永年、ユリの栽培に情熱を傾け、家族のことは蔑ろにしていたアール・ストーン(クリント・イーストウッド)。
品評会を優先して、娘(アリソン・イーストウッド)の結婚式もすっぽかしたこともある。
妻(ダイアン・ウィースト)とも別れ、農場も借金のカタに手放さざるを得なくなったある日、孫娘の結婚前日パーティを訪れたアールは、パーティは追い出されるも、出席者のひとりから「ちょっと運んでもらいたいものがある・・・」と持ち掛けられる。
貧すれば鈍す、中身は訊かずに、永年の無事故無違反の腕で運ぶことになったものは、メキシコから持ち込まれるコカインだった・・・
といったところから始まる物語で、あらすじだけ書くとサスペンス映画、それも90歳近い老人が主役なので、クリストファー・プラマー主演『手紙は憶えている』みたいなヒリヒリ系映画かと思いきや、さにあらず。
老人の運び屋アールに、お目付け役が加わり、どことなく相棒(バディ)+ロードムーヴィの趣き。
ロードムーヴィといっても、シカゴとの往復ドライブ、同じような行程なので、ハラハラ度なんて、ま、まるでない。
アールがお目付け役の若い衆に人生訓を垂れたり、メキシコのボス(アンディ・ガルシア)に招待されて年甲斐もなく(いや、高齢なのは自覚しているけど)羽目を外したりと、自由気ままな老人の人生で、これを良しとするか悪しとするかで、映画の好き嫌いは分かれそう。
イーストウッド本人がこれを良しとはしていない(が、好しとはしている感もある)ので、最後の最後は家族のもとにに帰ってきちゃう。
そこいらあたりは、なんとも自分勝手なハートウォーミング話みたいな感じがして、お尻がむずがゆくなっちゃうので、個人的には、「オレは家族なんてしらないよ、ま、別に運び屋してても、人生最後は悪くないからね」なんて平然としてもらったほうが面白かったのだけれど。
あ、ここまで書かなかったけれど、「凄腕運び屋」を追う麻薬捜査官たちの面々、ボスのローレンス・フィッシュバーン、実働部隊のブラッドリー・クーパーにマイケル・ペーニャと顔触れは凄いが、どうにもボンクラに見えてしまう。
ま、そこの追いつ追われつが主眼じゃないので、最後の逮捕劇はあっけない。
ということで、ベテランによる手慣れた話芸だけれど、それ以上の面白さがないともいえるのだけれど(それを言っちゃいけないのかも)。
素敵な映画を運んでくれてクリントありがとう。
「運び屋」という題名と予告内容から、物騒なシーンが多いのかと思っていましたが、予想とは違いました。
物騒は物騒なのですが、目を覆いたくなるような暴力や殺戮シーンがなく良かったです。
残酷なシーンがないのは老若男女全てを意識してかもしれません。
ネタバレになるので書けませんが、
クリント・イーストウッド演じる主人公の、
明るさ、自由さ、奔放さ、どんな人にも変わらない率直さ壁の無さ、度胸の良さ、潔さが素敵です。
物語は軽快に進みますが単純ではなく中弛みも一切無く、引き付けられたままクライマックス、そして静かな幕へと。
ハラハラドキドキあり、人生を考えさせられるシーンあり、台詞の素敵なセンス、折々のクスッと笑えるシーン、人のあたたかさ、後悔と再生。
クリント・イーストウッドって凄い人だったんだ、監督・主演で、こんな素敵な映画を世に出して。
素敵な映画を運んで来てくれて、クリント・イーストウッドありがとう!
こんなポスターなのに実はほのぼのコメディ
家族も顧みず百合の栽培に人生を賭けてきたアール。離婚した妻や娘に愛想を尽かされてもなお仕事に打ち込むがやがて商売も立ち行かなくなり困窮していたところで孫の友人だという男に声をかけられ車を運転するだけという簡単な仕事を持ちかけられる。教えられた住所を訪ねて小さな荷物を載せて指定されたホテルの駐車場に駐車、1時間放置するとダッシュボードに大金が放り込まれている。こりゃあボロいと調子に乗ったアールは次々に仕事を請けるうちに積荷がどんどん大きくなって・・・ポスタービジュアルで勝手にシリアスなドラマだと思い込んでましたがこれが結構軽快なコメディ。実録ドラマを本人達に演じさせるという壮絶な変化球だった『15時17分、パリ行き』の次がこれかよ!?と巨匠の引き出しの広さに目眩がしました。
軽快なカントリーやジャズをバックにピックアップトラックで埃っぽいハイウェイをダラダラ走る感じは70'sに日曜洋画劇場でよく観た光景、巨匠の作品で言えば『ダーティファイター』とか『ピンク・キャデラック』みたいなトーン、これはめちゃくちゃ懐かしい。ギャングに銃を突きつけられても動じない退役軍人ならではのタフさと裏腹なトボけた優しさを見せるアールに周りの人達が感化されていく様はコミカルで微笑ましい一方で、なぜか家族とはギクシャクしてしまう不器用さが身につまされます。そしてアールの与り知らぬところでドラマは暗転し、『許されざる者』、『トゥルー・クライム』、『グラン・トリノ』や『人生の特等席』などの諸作で繰り返し表現してきた自身の贖罪を滲ませる終幕は巨匠の作家性が全開、実に温かみのあるキュートな作品に仕上がっています。
劇伴も巨匠の趣味が丸出しで、豊かなトーンのジャズナンバーの数々が気品を添えています。共演陣が豪華で、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア、マイケル・ペーニャ、ブラッドリー・クーパーらの実力派がしっかり脇を固めています。実の娘アリソンが娘役を演じているところも注目すべき点ですが、本作で一際輝いていたのは元妻メアリーを演じたダイアン・ウィースト。家庭を顧みなかったアールを激しく拒絶しながらもそれとは相反する思いを吐露する演技が実にいじましくて魅力的でした。個人的にはなぜか家族で一人だけアールに懐いている孫ジェニーを演じたタイッサ・ファーミガも自分の孫にしたいくらい可愛かったです。
イーストウッドの贖罪
ハンドルを握りラジオに合わせて鼻歌
黒人の車のタイヤ交換に手を貸し
ビアンのツーリストたちにアドバイス
そして絶品のポークサンド
ロードムービーの気儘さが
いつしか家族愛に満ちたサスペンスへ。
外交的で偏見を持たぬ好々爺を
イーストウッドが好演。
家族を顧みず後悔した経験が
恥ずかしながら自分にもあり
身に積まされるシーンも多々あった。
ダイアン・ウィーストの姿が
今は亡き母と重なり心が痛かった。
エンドロールでは
「老いを受け入れるな」と歌う
やりたいことリストが
まだまだ目白押しの自分も
そうありたいと願うが果たして…
90歳になって思うこととは
沁みる映画だったー
87歳の老人が一人で麻薬の運び屋をしていたという報道記事に着想を得て製作された作品
映画では、90歳の主人公アールが「ただの老人」から「運び屋」になるまでが描かれている
そのアールの姿を見て思う
人は、90歳になった時、何を思うだろうか
クリント・イーストウッドからしたら若輩者の私が思うことは、ただの想像でしかない
しかし、それまでの人生を振り返り、自分が失敗したことを、若い世代にはさせたくないから
「こんなことをしてはいけないよ」と言って諭すのではないかと思う
では、今年、89歳になるクリント・イーストウッドが、この90歳になる運び屋の実話を題材に選んだのは何故だろうか
クリントなりに、この運び屋アールの人生に共感することがあり、自分の人生と重ね合わせた上で「こんな老人になってはいけないよ」というメッセージを込めて製作したかったのではと思う
そのメッセージを私たちに届ける役割を果たしているのが、ブラッドリー・クーパーだ
クリントの弟子とも言われるブラッドリーと、クリントが共演している場面はどれも貴重なものであり、その中で、クリントは若者世代へのメッセージを込めたセリフをしゃべっている
アールは、これまでどんな生活を送り、何を後悔し、若い世代に何を伝えたいのか
もっと具体的に言えば、彼は「人生で最も大切にすべきことは何か」を伝えたいのだ
それは、アールだけのものでなく、クリント自身の言葉でもあるのだ
私の心の中では素直に認めたくないけれど、
クリントはアールという役柄を通じて、ブラッドリー・クーパー世代へ伝言を遺しているのだろうと思った
ブラッドリーは、クリントからの遺言を託される重要な役割を果たしている
世界中の人たちが、クリントにはもっと作品を作って欲しいと願っているけれど
もうすぐ90歳を迎える彼は、遺すべき言葉を選んでいるのだ
そう思ったら、後半、この映画の中でクリントの放つ言葉の一つ一つが心に沁みて、切なくなり、映画が終わると涙が出てしまった
惨めで、孤独な老人になりたくないと思ったら、どうすべきなのか
そのクリントからのメッセージをしっかりと受け止めたいと思った作品だった
クリント・イーストウッドと重なる作品
試写会に行ってきました。
良かった!!
アメリカの広大な景色をバックに鼻歌まじりに車を運転するクリント・イーストウッドのシーンが好きです。
実際、88歳になった今でも自分で車を運転してインタビュー現場に現れるそう。
フライヤーから、もっと暗くて重い作品をイメージしていましたが、そこにいたのは可愛くてお茶目なお爺ちゃん。
それが例え犯罪者でも、触れ合う人達みんなを笑顔にさせる魅力のあるお爺ちゃん。
但し、家族を除いては…。
だから楽しい雰囲気の中にも孤独感があった。
終盤は一転、切なくて涙が溢れました。
観終わった後、家族や実家の両親の事を考えた作品でした。
上映前に映画評論家の町山智浩さんのトークショーがありました。
今作の実在の人物のプライベートは謎だった為、犯罪部分は実話そのままで、主人公の家庭をかえりみなかった生活部分はイーストウッドの伝記的な物になっている事。
イーストウッドの実の娘が主人公の娘役で出演していて実生活そのままで妙にリアルな事。
それを踏まえてみるとより楽しめます。
他にも色々楽しいお話をしてくださいました。
おススメの映画です。
映画界のレジェンドここにあり!
なんて深い映画なんでしょう。
これは、麻薬密売を行う運び屋のアクション映画ではなかった。
一人の老人の人生を描いた、愛情深いヒューマン映画でした。
この映画を作ろうと思ったきっかけは、NYタイムズマガジンで見つけた一つの記事だそうです。
この記事を見たクリントイーストウッド氏は、彼の人生を自分の人生に置き換えて、一つの作品を作り上げました。
百合の栽培に人生をかけた男が、事業に失敗し、お金を稼ぐために麻薬密売という犯罪に手を出してしまうところから、この話は始まるのですが…。
高齢のヨボヨボな老人と見せかけて油断させ、何百キロもの麻薬を黒いトラック一つで何往復もするというのは、なかなか大胆な犯罪行為。
今にも死にそうな90歳近い老人が、何百キロもの麻薬を運んでいるなんて誰が予想できるでしょう…。
その想像もつかないような発想を逆手にとって、大胆不敵に麻薬を運びに運び続ける姿は天晴の一言!
そんな彼の人生は、ひたすら仕事仕事、仕事に邁進する日々。
家族のことを顧みず、仕事ばかりの人生を歩んできたことに、後悔の念を抱きながら余生を重ねてきた男だったのです。
この男の生き方は、まさにクリントイーストウッドの人生そのもののように映りました。
若い頃から映画、映画、映画と共に歩んできた人生。
二人の女性と結婚しますが離婚し、映画監督として俳優として、業界人のレジェンドとして君臨し続けてきた彼。
普通の人生とは程遠い、何者にも縛られない、着の身着のままの人生を歩んでばかりいたせいで、彼は娘や息子との関係も円満とはいかなかったよう…。
このことを後悔し続けた結果、その懺悔の意味も込めてこの映画を手掛けたのだとしたら、なんとも考え深いものがあります。
映画では、最後に妻のそばに寄り添い、最後の最後に家族との掛け替えのない時間を過ごす姿が印象的でした。
実際のクリントイーストウッド氏も、この映画をきっかけに家族の大切さを改めて振り返りたかったのかもしれませんね。
この映画は、前半の自由でアバンギャルドな生活に笑いつつ、後半で家族の愛の素晴らしさを感じるという…。
一つの作品から、笑いと感動という二つの感情が湧き上がりました!
『グラン・トリノ』のような、無口で気難しいクリントイーストウッド氏も好きですが、女好きなムッツリスケベな老人の姿も素敵(^^)
90歳を迎えようとしている彼ですが、この映画を見る限り、まだまだ映画の制作活動は止まりそうにありません…。
彼はいつまで、映画の世界に君臨し続けるのか?
そして主役を張れるのはいつまでなのか?
まだまだ、彼の人生に期待したくなる映画でした。
最後に、今回試写会に映画評論家の町山智浩さんが登場してくださいました。
彼は実際にクリントイーストウッド氏と対談したという、凄い人なのです!
運び屋の映画では、90歳近い彼が実際にトラックの運転をしていたという話。
耳が遠いにもかかわらず、補聴器を使わずに会話をしていた。
まだまだ現役で女性とヤリまくっている⁈
などなど、丸秘話が炸裂していました!
この機会に、貴重な話を色々と聞くことができたことは大変光栄です!
なかな体験できない貴重な時間をどうもありがとうございました(^^)
伝説の運び屋は90歳の老人だった
クリントイーストウッド主演兼監督作品。ブラッドリークーパー、ローレンスフィッシュバーン、アンディガルシアとキャストも豪華!!伝説の運び屋はなんと90歳の老人だった…実話がベースなのでリアリティがあり、ラストまで見応えありの作品で充分楽しめました。お金と引き換えに手にした代償は…イーストウッドの演技も素晴らしかった!!破天荒な爺さんが凄過ぎた(笑)
泣きました
予告編を観て重い映画なのかなと思っていましたが、あまりそんなこと無いように感じました。
ただ登場人物それぞれの感情が押し寄せてくる映画だと思います。
号泣してしまいました。
この良さが沢山の人に伝わりますように
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