「男達の年輪」運び屋 Masayaさんの映画レビュー(感想・評価)
男達の年輪
90歳で少し背中の丸まった老人アールはユリの花と旅と女をこよなく愛する。
そして、88歳の老人クリントは自らが演じ、再び凄い犯罪映画を作り上げた。
「グラン・トリノ」で自身が演じてきたヒーロー像を葬り、俳優としてはほぼ引退状態だったイーストウッドが何故再び主演したかという疑問は、観終わって明らかになりました。
映画の中の主人公アールは高齢でありながら、長距離ドライブを楽しみ、女遊びもして、麻薬組織のチンピラ相手に「小僧、殺れるなら殺ってみろ。俺は退役軍人だ!」と凄んでみせる。この実在の人物がモデルのタフな老人を体現出来るの俳優はイーストウッドをおいていないでしょう。それほど二人の老人は一心同体の様に見えてしまいます。イーストウッドを隣にブラッドリー・クーパーすら霞んでしまいます。
イーストウッドが演じた多くの人物がそうであった様に、アールもまた家族と距離を置き見守る、孤独な男です。
監督としてのイーストウッドはいつもの様に誠実で解りやすい演出に徹してますが、そのシンプルさが作品を生々しく力強いものにしている様に思えました。
イーストウッドはこの作品に主演する事で、自分自身の人生にピリオドを打ったのではないでしょうか?
木彫りの如く深く刻まれたイーストウッドの顔のしわに、老人としての誇りある生き様を教えられる様な、心に沁みる映画でした。
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